研究課題/領域番号 |
15K06418
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大沼 正人 北海道大学, 工学研究院, 教授 (90354208)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 構造異方性 / 弾性ひずみ / ランダム系の不均一性 |
研究実績の概要 |
Fe, Co, Ni を主成分とする強磁性アモルファス合金を応力印加しながら結晶化温度以下の熱処理を行った結果として生じる誘導磁気異方性の構造的起源について残留歪みに注目して種々の検討を行っている。特に、応力下熱処理後の再加熱時の熱膨張測定より、凍結歪みの放出過程を調べていくと放出量が初期熱処理温度付近で最大となる「温度記憶現象」を発見した。この期限を検討するために、同一レベルの応力で種々の温度で熱処理をおこない、凍結できる弾性歪み量の大きさが温度が高くなるほど、大きくなることを見出した。これら2つの結果からガラス遷移温度が不均一分布しているモデルを構築し、実験事実を説明可能な温度とガラス遷移温度との関係を示す模式図を作成した。さらにナノインデンテーションを行い、凍結歪み量が大きい試料で場所ごとの挙動差が大きいことがわかってきた。これが凍結歪み量の空間分布を反映した降伏現象である可能性が高いことを見出しつつある。以上の結果についてスロバキアで行われたチェコおよびスロバキア磁性会議、宇部で行われた日本材料学会金属ガラス部門会議でそれぞれ、招待講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
想定したナノインデンテーション実験は終了し、現在、データ解析中である。また、温度変化による影響も熱膨張実験が終了している。これらの実験事実を矛盾なく説明できるモデルの構築に成功した。ナノインデンテーションでは凍結歪み量が大きい試料で場所ごとの挙動差が大きいことがわかってきた。これが凍結歪み量の空間分布を反映した降伏現象である可能性が高い。以上の結果についてスロバキアで行われたチェコおよびスロバキア磁性会議、宇部で行われた日本材料学会金属ガラス部門会議でそれぞれ、招待講演を行った。関連論文を1報投稿し、受理された。また、関連する共著論文がNature Comunicationsから発表された。現在、さらに1報の投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
我々が提案しているガラス遷移温度の空間分布モデルでは2回目の加熱実験では1回目の加熱時とガラス遷移の空間分布がほとんど変化していないことを想定している。このモデルの裏付けのために加熱時の保持時間を変化させた試料の作成準備中である。この場合には、温度の他に、緩和時間も2回目の加熱時における挙動変化を左右するパラメータとなることが予想され、「温度記憶状態が劣化する」と予想している。この着想をもとに、29年度に協力研究者であるHerzer博士の研究室において試料作成を行う予定である。以上の結果を含め、29年度は1報の論文投稿と1件の国際会議発表、および1件の国内会議発表を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費については消耗品費として想定した熱膨張系の石英ガラス部が良好な状態であり、交換が不要であったため。旅費については参加を予定していた国際会議について参加を1年遅らせたため。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費ついては昨年度参加予定であった会議を1年伸ばしたため、今年度参加予定(スペイン)であり、また、新たに追加した実験を行うため、別途、ドイツに出張予定であり、消化予定である。物品費については今年度はX線ターゲットの交換が必要であり、そちらに使用予定である。
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