• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実施状況報告書

幾何学的手法に基づくランダム粒界構造の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K06420
研究機関東北大学

研究代表者

井上 和俊  東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助手 (60743036)

研究分担者 斎藤 光浩  東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (00510546)
王 中長  東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 准教授 (20510548) [辞退]
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード傾角粒界 / 構造ユニット
研究実績の概要

金属やセラミックス材料は主に多結晶体であり、粒界構造が機能物性に多大な影響を及ぼすことが知られている。対称傾角粒界は、しばしば構造ユニットと呼ばれる多面体の配列で記述でき、その配列を正確に記述することで物性予測に役立つと考えられる。粒界転位同士は局所的に相互作用をすることから、それらが導入される構造ユニット同士は最大限離れるように配置される。その結果、構造ユニットの配列は準周期配列の一部を実現し、有理数の分布との一対一対応が導かれる。
一方、さまざまな物理現象に現れるファレイ数列は有理数の分布と深く関連することから、粒界構造ユニットの配列を予測することが可能である。このような数学的手法により、粒界構造ユニットの配列の本質的な原理を明らかにし、計算機シミュレーションなどによらず代数的な取り扱いで粒界構造を予測することに成功した。
さらに、傾角が90度までの<001>, <111>粒界の構造はファレイ数列を用いて記述されるが, 傾角が180度までの<110>, <112>粒界は, 鏡映ファレイ数列によって記述できることが新たに分かった.
原子分解能走査透過電子顕微鏡計測を組み合わせることで、様々な物質の粒界構造の予測に応用することができる。また、幾何学的な視点を導入することで、異種界面や非対称傾角粒界の構造予測にも役立てることができる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

多結晶体である金属やセラミックス材料は、低指数粒界と「ランダム」粒界に大別されると考えられてきたが、対称傾角粒界ではランダム性とは準周期性の一部であることが実験的に示された。すなわち対称傾角粒界は、局所的に歪んだ構造ユニットの準周期配列の一部で構成される。従来、すべての傾角に対する構造を予測するためには、無限回の操作が必要であるとされてきたが、我々はファレイ数列などの代数的な取り扱いにより、任意の傾角に対する構造ユニットの配列を高精度で予測するアルゴリズムを確立した。この予測をもとに酸化マグネシウムの原子分解能走査透過電子顕微鏡計測結果を解析すると、複数の試料で数十ナノメートルに渡って予測どおりの配列が観察された。
ランダム粒界の解明という研究課題について、対称傾角粒界の構造を数学的に予測し実験結果とよい一致を得られた点において、概ね順調に進展していると判断する。

今後の研究の推進方策

今回得られた粒界構造ユニットの代数的取り扱いを応用し、粒界エネルギーを求めることを検討している。粒界エネルギーは主に, 弾性エネルギーと粒界転位芯のエネルギーで構成されるが、転位芯エネルギーの平均値は、2種類の構造ユニットの比および配列に依存すると考えられる。通常、 低指数対応方位からのずれ角が小さいことなどを仮定し近似を行う場合が多いがそのような近似は行わず、構造ユニットの配列を考慮しつつ組合せ的に粒界エネルギーを計算する。この手法は, いくつかの参照構造についての転位芯エネルギーを与えるだけで、任意のミスフィット角の粒界面に対して適用することができる。現在得られている結果は既存の結果における粒界エネルギーの特徴を捉えており、第一原理などによる理論計算に比して極めて短時間に粒界エネルギーの概形を得ることが期待できる。
また、原子分解能走査透過電子顕微鏡計測と幾何学的な視点を併せることで、異種界面や非対称傾角粒界の構造予測への応用を検討している。
さらに、微分幾何学による転位の定式化と応力分布のモデルを実験結果と比較できる形態に定式化し直す作業も行う予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Interfacial Atomic Structure of Twisted Few-Layer Graphene2016

    • 著者名/発表者名
      R. Ishikawa, N. Lugg, K. Inoue, H. Sawada, T. Taniguchi, N. Shibata, Y. Ikuhara
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 6 ページ: 21273:1-9

    • DOI

      10.1038/srep21273

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] The Decomposition Formula of < 001 > Symmetrical Tilt Grain Boundaries2015

    • 著者名/発表者名
      K. Inoue, M. Saito, Z. C. Wang, M. Kotani, Y. Ikuhara
    • 雑誌名

      Materials Transactions

      巻: 56 ページ: 1945-1952

    • DOI

      10.2320/matertrans.M2015277

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] On the Periodicity of < 001 > Symmetrical Tilt Grain Boundaries2015

    • 著者名/発表者名
      K. Inoue, M. Saito, Z. C. Wang, M. Kotani, Y. Ikuhara
    • 雑誌名

      Materials Transactions

      巻: 56 ページ: 281-287

    • DOI

      10.2320/matertrans.M2014394

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Structure of Symmetrical Tilt Grain Boundaries2016

    • 著者名/発表者名
      K. Inoue, M. Saito, M. Kotani, Y. Ikuhara
    • 学会等名
      A3 mini-Workshop on Soft Matter
    • 発表場所
      北京(中国)
    • 年月日
      2016-03-24
    • 国際学会
  • [学会発表] The Mathematical Structure of Symmetrical Tilt Grain Boundaries2016

    • 著者名/発表者名
      K. Inoue, M. Saito, M. Kotani, Y. Ikuhara
    • 学会等名
      The AIMR International Symposium 2016
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城県・仙台市)
    • 年月日
      2016-02-22 – 2016-02-24
  • [学会発表] 対称傾角粒界の分解則について2015

    • 著者名/発表者名
      井上和俊, 斎藤光浩, 王中長, 小谷元子, 幾原雄一
    • 学会等名
      日本金属学会秋期講演大会
    • 発表場所
      九州大学(福岡県・福岡市)
    • 年月日
      2015-09-26
  • [学会発表] 対称傾角粒界のHRTEM観察と分解公式について2015

    • 著者名/発表者名
      井上和俊, 斎藤光浩, 王中長, 小谷元子, 幾原雄一
    • 学会等名
      日本顕微鏡学会第71回学術講演会
    • 発表場所
      京都国際会館(京都府・京都市)
    • 年月日
      2015-05-14
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi