研究実績の概要 |
陽極酸化・脱合金化することにより新たな蓄電材料としての応用が期待されるNi-Si-Tiアモルファス合金について、第一原理計算を用いてエネルギー的に安定な局所構造とその特徴を明らかにすることを目的として、平成29年度においては下記の2点について明らかにした。 1.β-Sn型構造のSi母体中におけるTi-Ti、Ti-NiおよびNi-Niの2体相互作用エネルギーとこれら2元素まわりの局所構造を計算し、Ti-TiおよびTi-Niの2体相互作用エネルギーが負となる配置、すなわちエネルギー的に好ましい局所構造は、(Siが多数元素の)Ti-Si/Ti-Ni-Si規則合金中の局所構造と類似のものとなること、典型的にはTi原子のまわりでSi原子が6角形を構成することを明らかにした。この結果は、Ti原子のまわりでは、Si原子間の結合がsp2混成軌道的に振舞うことを示唆している。 2.Ni-Ni2体相互作用エネルギーについては、β-Sn型構造Si中では明確な配置依存性は現れず、むしろダイヤモンド構造Siにおいて安定な配置をとることを明らかにした。この点は、(Siが多数元素の)Ni-Si規則合金中の構造の特徴とも一致するものであり、Ni原子周辺においては、Si原子間およびNi-Siの結合はsp3混成軌道的に振舞うことを示唆している。 上記の結果は、Ti,Ni元素のみならず、Ti元素はV、Cr等の3d遷移金属前半の代表として、またNi元素はFe、Co等の3d遷移金属後半の代表として、それらの元素を含む規則Si合金中の特徴とも一致するものであり、3d遷移金属一般についてのSiが多数元素のアモルファスSi合金の局所構造へ知見を与えるものである。
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