研究課題/領域番号 |
15K06424
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
稲垣 祐次 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10335458)
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研究分担者 |
河江 達也 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30253503)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 水素吸蔵金属 / vibrating wire |
研究実績の概要 |
本研究では低温における金属の水素吸蔵特性の評価を従来の手法とは異なる機械的振動法を用いて行うことを目的とする。ここで想定している低温とは、室温以下、液体ヘリウム温度に及び、従来のジーベルツ法による評価が困難な領域である。水素は最も軽い元素であり、その量子性に興味が持たれる。それが顕著となる低温領域では、量子トンネリングによる物質内への水素吸蔵、物質内での水素拡散過程が期待されるが、特に吸蔵過程に関する実験的研究例は極めて少ない。 初年度、我々はリアルタイムで水素吸蔵過程がモニターでき、且つ、温度依存性を容易に測定可能な実験手法としてVibrating wire法を用いた金属の水素吸蔵特性評価に特化して開発、測定を実施してきた。両端を固定した金属ワイヤに磁場中で交流電流を流すとローレンツ力によりワイヤは振動するが、その共鳴周波数はワイヤのヤング率、密度に依存する。従って、水素吸蔵に伴うワイヤの物性変化が共鳴周波数の変化に反映されると考えられ、代表的な水素吸蔵金属であるパラジウムのワイヤを用いて、まずは室温で検証を行った。予想通り水素吸蔵に伴ってワイヤの共鳴周波数は大きく変化し、水素吸蔵・放出に対して可逆的にレスポンスすることなど、本手法が極めて有効であることが確認された。更に低温200Kでも水素吸蔵に伴う周波数変化が観測され、室温における結果との比較から、水素吸蔵過程におけるエネルギー障壁を約0.39eVと見積もった。以上の結果を学術雑誌に公表すると共に、ニオブやバナジウム等の他の金属も含めた室温以上の高温領域、あるいは200K以下の低温領域で本手法を用いた測定を実施、または計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はほぼ想定通りに進展しており、現在まで得られている結果もほぼ想定内の内容である。既に学会や学術雑誌等で本研究課題に関する成果公表行っており、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
初年度ではvibrating wire法に特化した。本手法は測定試料がワイヤに限定される為、次年度以降では、粉末状の試料でも測定可能な機械的振動法の開発を行う。また初年度の経験から総合的なデータの評価を行うためにも室温以上の高温領域での測定の必要性を感じたので、並行して高温用プローブの開発も実施する。
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