研究課題/領域番号 |
15K06426
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小山 泰正 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20150295)
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研究分担者 |
仲山 啓 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (30732193)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 12角形原子コラム / 12角形原子ユニット / 12角形準結晶 / 近似結晶 / 配位多面体 / 透過型電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
12角形準結晶に存在が指摘される12角形原子コラムおよびユニットに関係して、Mn-Si-V合金系に存在するH、ν、およびσ相の結晶構造、すなわちH、ν、およびσ構造を取り上げ、作製した試料の結晶学的特徴を主に透過型電子顕微鏡を用いて調べた。ここで、H、ν、およびσ構造中には共通して12角形原子コラムの存在を見て取ることができ、Hおよびν構造中には、さらに、12角形原子ユニットの存在をも見て取ることができる。結果として、以下の興味深い研究成果が得られた。 (1) H構造に関して、溶体化試料中に、12角形原子コラムが残存した特徴的な構造欠陥が観察され、このことから12角形原子ユニットの安定性が示唆された。さらに、別の組成の熱処理試料中には、12角形原子コラムの新しい長方形配列が観察された。この結果を含む実験結果の解析から、(σ→H)構造変化は、実際、12角形原子コラムの再配列としてとらえることができること、また、その再配列の際には、上述の12角形原子コラムの長方形配列により特徴づけられる準安定状態を経由することが明らかになった。また、構造変化の各段階における12角形原子コラムの再配列は、大きな原子変位を必要とせず、12角形原子コラムの殻から中心、および中心から殻へと役割を入れ替える、わずかな原子変位により説明可能であることが示された。 (2) H構造とν構造の共存試料において、H構造が、上の場合とは異なる、12角形原子ユニットのユニット軸方向の位相シフトによって特徴づけられる構造欠陥を含みやすいことがわかった。この構造欠陥に起因する暗い線状のコントラストと同様のコントラストが、高分解能像中の共存するν構造領域全面にわたり観察された。この結果を含む実験結果の解析から、ν構造は、H構造に対して、12角形原子コラムのユニット軸方向の位相シフトを連続的に導入した構造であると結論された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、12角形準結晶の近似結晶であるH相を中心に、その結晶構造中に12角形原子コラムおよび12角形ユニットの存在を見て取ることができる、ν相やσ相等の金属間化合物相に注目している。ここで、本研究課題における具体的な関心は大きく分けて、①12角形原子コラム形成の起源、②12角形原子コラムの再配列によって形成される12角形原子ユニットに関する特徴、および③12角形原子コラムおよびユニットの安定性の3点である。現在までに、当初の予定とは順番が前後してしまったものの、②と③に関係して、前述の「研究実績の概要」に示したような興味深い結果を得たため、本研究課題の進捗状況はおおむね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は大きく分けて2つある。まず1つは、12角形原子コラム形成の起源に関する検討課題を遂行することである。すなわち、Mn-Si-V合金系に存在するRおよびν相の結晶構造、すなわちRおよびν構造を対象にして、両者の結晶学的相関および(R→ν)構造変化の特徴を調査し、ν構造が含む12角形原子コラムについて、その出現の起源を検討する。具体的な手順としては、(1)試料作製と評価による適切な合金組成および熱処理の選定、(2)作製した試料の透過型電子顕微鏡による観察、および(3)得られたデータの解析を予定している。 もう1つは、分子軌道法による電子状態計算である。電子状態計算により、12角形準結晶の出現に直接関係する、12角形原子コラムおよび12角形原子ユニットの安定性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由としては、透過型電子顕微鏡用特殊フィルム(富士フイルム社製イメージングプレート、691千円)および透過型電子顕微鏡用写真フィルム(富士フイルム社製、500千円)の購入を先送りしたことが挙げられる。先送りした理由は、既に我々が所有して使用していた透過型電子顕微鏡用特殊フィルムが、通常の耐用年数を超えて使用可能だったため、本年度はそれらを継続して使用し、購入を急がなかったためである。ただし、次年度にはこれらの購入を予定している。
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次年度使用額の使用計画 |
購入を先送りした透過型電子顕微鏡用特殊フィルム(富士フイルム社製イメージングプレート、691千円)および透過型電子顕微鏡用写真フィルム(富士フイルム社製、500千円)に加え、原料試料(75千円)、アルミナ坩堝(75千円)、不透明石英管(20千円)、およびMoシート(32千円)等の消耗品の購入を計画している。また、前年度に引き続き、研究協力者に対する謝金(600千円)の支払いも予定している。
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