研究課題/領域番号 |
15K06427
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
佐藤 祐喜 同志社大学, 理工学部, 准教授 (20512693)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 正方晶二珪化モリブデン / エアロゾルデポジション / 透明導電性薄膜 |
研究実績の概要 |
「正方晶二珪化モリブデンの3次元選択形成と評価」と題して、二珪化モリブデンやその他の機能性酸化物(半)導体の研究を遂行した。 エアロゾルデポジション法は堆積させたい結晶性微粒子を高速に加速し、基板との衝突・粉砕を起こすことで微粉砕された結晶性微粒子が結晶構造やその物理的特徴を保持したまま堆積する手法である。二珪化モリブデンは常温で高い導電率を有し,融点も約2030℃と高く,高い化学的安定性を有することが知られている.また,MoSi2 は他の金属珪化物と同様にその結晶構造により抵抗率,耐酸化性能が大きく異なり,正方相が実用上最も好ましい.エアロゾルデポジション法による堆積により、その速度,基板の材質、基板の表面形状に強く依存することを系統的に調べ、3次元形成される条件を詰めている。一例として、オプティカルフラットなパイレックスガラス上には薄膜が形成されるが、わずか数10ナノメートルの段差がある多結晶アルミナ上では基板表面の粒界部分にのみ選択的に堆積できることを明らかにした。一方で、同じ材質である単結晶サファイア基板上にFIBにより、人為的に同様の凹凸を作製した基板上に二珪化モリブデンを堆積した場合、3次元形成ができる場合とできない場合があり、単純な凹凸のみでは堆積の可否が決定していないようであり、まだ十分な評価が行えていない。 一方、平行して進めている透明導電性材料の形成は順調に進み、ガラス基板上のみならず、ポリ塩化ビニルと言った一般的なプラスチック基板上にも堆積でき、かつ抵抗率が約2~3×10^-3 [Ω・cm]と十分実用に堪えうる抵抗率を持つ薄膜が形成できた。これらの結果は、応用物理学会、日本セラミックス協会年会やエレクトロセラミックス研究討論会と言った学術講演会で報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
正方晶二珪化モリブデンの3次元形成、特に、任意の場所に細線形状、ウォール形状の形成を目指しているが、当初想定していた基板表面の凹凸、微小な段差に依存していると考えていたが、単純な凹凸のみで堆積の可否が決まっていないことがわかった。そのため、膜形成の条件を詰めるのに予想以上の時間を要している。 また、平行して進めている導電性透明薄膜が予想以上に好結果(低抵抗)を示したために、研究の比重が少し変化したため、当初の想定よりも3次元形成への研究の進展状況が遅れている
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた基板表面の凹凸によって選択的な3次元形成ができると考えていたが、単純に凹凸のみではなく他の要因も絡んでいる可能性が示唆された。そこで原子間力顕微鏡(AFM)の電気力顕微鏡(KFM:ケルビンプローブモード)も新たに併用して、表面の凹凸のみならず、基板表面の電気的ポテンシャルも確認して3次元形成の可否との相関を観察する。
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