研究実績の概要 |
エアロゾルデポジション(AD)法は堆積させたい結晶性微粒子を高速に加速し、基板との衝突・粉砕を起こすことで微粉砕された結晶性微粒子が結晶構造やその物理的特徴を保持したまま堆積する手法である。MoSi2は常温で高い導電率を有し,高融点,高い化学的安定性を有することが知られている.また,MoSi2 は他の金属珪化物と同様にその結晶構造により抵抗率,耐酸化性能が大きく異なり,正方相が実用上最も好ましい.AD法による堆積により、速度,基板材質、基板表面 形状に強く依存することを系統的に調べ、3次元形成を行った。一例として、オプティカルフラットなパイレックスガ ラス上には薄膜が形成されるが、わずか数10 nmの段差がある多結晶アルミナ上では基板表面の粒界部分にのみ選択的に堆積 できることを明らかにした。一方で、同じ元素で構成される単結晶サファイア基板上にFIBにより、人為的に同様の凹凸を作製した基板上に MoSi2を堆積した場合、3次元形成ができる場合とできない場合があり、また、凹の開口と深さのアスペクト比にも堆積の可否に差があり、単純な凹凸のみでは堆積の可否が決定していないようであり、今後より詳細な研究が必要であることがわかった。 一方、平行して進めている透明導電性材料の形成は順調に進み、ガラス基板上のみならず、プラスチ ック基板上にも堆積でき、抵抗率が約2~3×10^(-3) [Ω・cm]と十分実用に堪えうる抵抗率を持つ薄膜が形成できた。また、透明導電性材料源である酸化インジュウム(In)は希少金属のInを含むためにできるだけ少量で、かつ、高い光透過性と電気伝導度を得るために酸化Inとアルミナの複合膜を作製し同程度の光透過性, 電気導電性を保ちながらIn使用量を1/3程度に低減できることを実験的に明らかにした。これらの結果は 、学術論文誌への投稿と国内の学術講演会で報告を行った。
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