研究課題/領域番号 |
15K06436
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
木村 勇雄 新潟大学, 自然科学系, 教授 (00169921)
|
研究分担者 |
田口 佳成 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (30293202)
三上 貴司 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (30534862)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | リン酸カルシウム / チタン / 化学工学 |
研究実績の概要 |
1. 微小反応装置の設計・製作 今年度は,実験の精度を高めるために,これまでに使用してきた装置の設計を見直すことを目的とした。本研究では,装置内有効空間高さを1/10ミリメートルの精度で変更する。その影響を正しく把握するために,装置内寸法精度を5/100ミリメートル以内,表面粗さを0.5マイクロメートル以内と規定した。さらに,有効空間内に設ける起伏の影響を正しく把握するために,起伏を設けない状態における流れを乱す要因を排除すること,および気泡の混入防止と排出ができる機構を考案した。起伏の設計では,狭路と広路における線速度が等しくなるように寸法を定め,流れのみの影響を検討できることとした。以上の条件を満たすように,試案を3D CADを用いて具体化し,設計を繰り返し修正したことで,製作に至ることができた。 2. 流動場でのCaP生成 装置の製作が完了しなかったため,実施しなかった。 3. マイクロカプセル調製 芯物質となるカルシウム塩のモデル粒子として,化学的に比較的安定な炭酸カルシウム(カルサイト)を用いた。界面活性剤吸着層は一般的な低分子界面活性剤に高分子界面活性剤を混合し,さらに中分子界面活性剤を加えることにより,全界面活性剤吸着量を増大できる条件を見出した。吸着層に吸収させたスチレンモノマーを重合させ,マイクロカプセルを得た。その徐放特性を評価し,カプセル壁の形成を確認した。 4. 溶液組成の設計と静止場でのCaP生成 平成28年度の研究計画を前倒しで実施した。疑似体液の組成に基づいて,構成化学種の組み合わせおよび濃度を変えて溶液組成を設計し,CaP生成を試みた。炭酸水素イオン濃度に最適値が存在することを見出した。チタンの研磨前処理における砥粒寸法とCaP生成量の関係を評価した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
微小反応装置の設計は,精密加工業者と綿密に打ち合わせすることで,高い完成度で実施することができた。ただし,装置の製作が完了しなかったので,流動場でのCaP生成は実施できなかった。マイクロカプセル調製については,策定した界面活性剤の選定指針に基づいて実施し,おおむね順調に成果を挙げることができた。チタンの前処理の影響調査については当初予定にはなかったが,研究を遂行する過程でその影響が示唆されたので,静止場において詳細に検討することとした。 当初計画通りの部分,進まなかった部分,次年度分を前倒しで実施した部分があり,総合的には想定内の進展状況と判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
流動場でのCaP生成を実施する。反応装置内にチタン板を設置し,疑似体液を計画したスケジュールに基づいて間欠流通させ,CaP生成を実施する。装置内有効空間の底面に起伏を設け,垂直方向流れを促進することで分散強度を増大させる。起伏の幾何学的因子を系統的に変化させる。 マイクロカプセル調製を推進する。芯物質と壁物質の材質を見直す。得られるマイクロカプセルの徐放特性を評価し,制御するための重合条件を検討する。チタン板上でのCaP生成を補完し,不均一核生成のみを継続させる速度でカルシウムイオンを徐放するようマイクロカプセル特性を制御する。 溶液組成の設計を実施する。疑似体液の組成に基づいて,構成化学種の組み合わせを変えて溶液組成を設計する。静止場でのCaP生成によって条件を絞り込んだ上で,流動場での生成を試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
微小反応装置の寸法精度を当初予定から向上させたことに伴い,製作費用が見積額を超えることになった。そのため,装置の一部を平成28年度に後倒しで製作することにした。一方,平成28年度実施計画分を前倒しで実施し,ほぼ同額の経費を支出した。結果として,少額の未執行分が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
反応装置製作経費の一部として使用する。
|