本研究では,金属イオン交換・吸着能を有する各ポリマーに対してハロゲン処理を行うことによって,ポリマーの熱安定化と鋳型の形成を同時に行い,引き続き水洗浄除去を行うことで,残炭率を増大させながら精密な細孔制御を達成するといった,従来の調製法とは異なる新規ポーラスカーボンの合成技術を確立することを目的とする。最終的には,従来法よりも製造コストの大幅な低減と,鋳型法特有の構造規則性を生かしたポーラスカーボンの新たな用途拡大を目指している。 平成29年度は,前年度までの研究成果の再現性を調べるとともに,ポリマーの改質法の一種である水熱法の溶媒条件にヨウ素を用いる方法を試み,得られるカーボンの炭素化特性についての検討を行った。その結果,セルロースカルボン酸塩をハロゲン処理の原料前駆体とする場合,炭素化過程で生成するハロゲン化アルカリの生成量に依存して,その粒子表面の近傍で炭素の酸化浸食が進行することが改めて確認できた。この現象を積極的に利用することで,1000m2/gを超えるポーラスカーボンが調製可能となった。またこの効果は原料前駆体を汎用のイオン交換樹脂に応用しても有効であり,ミクロからマクロまでの大きさの異なる細孔の階層構造を付与することが可能となった。一方,ヨウ素を組み合わせた水熱処理においては,ハロゲン添加によって細孔特性を損ねることなく,大粒径の球状ポーラスカーボンが高収率で得られることが明らかとなった。 研究期間全体を通じて,ポリマーのハロゲン処理,炭素化,水洗浄といった一連の単純工程で,適度に細孔制御したポーラスカーボンが高収率で得る方法を確立できた。また,得られたカーボンは,従来の炭素体が不得意とする低相対域での水吸着能に優れた特性を示したことから,今後,吸着式ヒートポンプや調湿材などへの応用が期待できる。
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