研究課題/領域番号 |
15K06443
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
吉門 進三 同志社大学, 理工学部, 教授 (00158403)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 2珪化モリブデン / 熱電変換素子 / 抵抗率 / ホール係数 / 温度特性 / 電気伝導機構 / 新規組成 |
研究実績の概要 |
300℃までホール係数および抵抗率が測定可能な装置を作製し評価した。これにより20-573Kの温度範囲でのホール係数および抵抗率の測定が可能になった。この装置を用いてβ型MoSi2、新規組成MoSi2、β型を100-1050℃で熱処理した試料についてホール係数を測定した。その結果以下の伝導モデルの妥当性がより明確となった。β型MoSi2は単一の伝導路を電子が格子振動等の散乱課程を経て伝導する。そのとき電子の有効質量は負であり、伝導型はp型である。Xが増加すると、Mo格子の間で過剰なSiは平均構造をとり、配置の無秩序性が増加する。そのとき、フェルミ面近くの電子は局在準位間をホッピング伝導する。X≧2.5以上で新規安定構造に変化した後も単一の伝導路を電子は局在準位間のホッピング伝導支配的になる。そのとき電子の有効質量は正であり、伝導型はn型である。β型MoSi2を高真空下において1000℃程度で熱処理を行うことによりα型にした後、ホール係数の温度特性を測定した結果、キャリアの伝導路が2種存在することがわかり、抵抗率の温度特性と合わせて解析することにより、それぞれの伝導課程に関するホール係数の温度特性を分離することに成功した。それぞれのホール係数はβ型の場合と類似の温度依存性を示す。サーマルプローブ方により簡易的にα型,β型,β型と未知相との混合物についてゼーベック係数の測定を行った、その結果、ホール係数の測定結果と合わせるとα型は電子と正孔の2種のキャリアが、β型はほぼ正孔のみ、未知相は電子と正孔の2種のキャリアが存在することが分かった。以上の結果よりβ型において大きな値のゼーベック係数が期待される。抵抗率とホール係数の温度素特性より得られた知見をまとめて国際学術誌に(Material Chemistry and Physics)投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
モリブデンとケイ素のあるいは2珪化モリブデンとケイ素の混合粉末を用いてメカニカルミリング(アロイング)法により新規組成と考えられるMo2Si2.5の合成を行う前段階として合成例が報告されている鉄とケイ素の合金の作製を試みた。その結果、硬度の大きいケイ素のミリングによる破談が生じる場合には鉄とケイ素のほぼすべてが反応することがわかった。しかしこの条件を見いだすために多くの時間を費やした。そのため28年度に予定していていたモリブデンとケイ素の合成を前述のミリングの条件を基に平成29年度に行うことにした。そのために研究に遅れが生じた。またフラックス法による新規組成の合成には平成28年度内には成功していない。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度も28年度に続きβ型MoSi2および新規組成の合成と評価に専念する。フラックス法およびメカニカルミリングによりβ型MoSi2および新規組成モリブデンシリサイドを合成する条件を探索する。β型を作製する条件は報告されている。新規組成を合成する場合、新規組成がSiの組成が極めて狭い範囲で得られるために、MoとSiの出発組成を細かく変化させるとともにNaの最適量も探索する必要がある。電気炉は既設のものを使用する。これと並行して、鉄とケイ素の合金作製により得られた作製条件を基に遊星型ボールミル装置を用いてメカニカルミリングにより粉末試料を作製する。ミリングポットとボールには、経験により、金属ではなく高耐摩耗性結晶性樹脂であるポリエーテルエーテルケトンを使用する。摩耗分が極めて少なく、ポットやボールはほとんど変形しない。駆動装置には、科学研究費助成金により購入したプレミアムラインPL-7を使用する。この装置は、現存の装置の中で最もポットの自転・公転速度が大きい(それぞれ1100rpmおよび2200rpm)ので、反応速度が大きく、また異なる結晶構造を有する試料の合成が期待される。作製した粉末試料のX線結晶構造解析を行う。併せて100 μmの薄いサファイア基板上に長時間スパッタにより長時間成膜することにより、結晶構造解析に必要な新規組成の合成も行う。粉末をタングステンカーバイド臼に入れて500~550℃、600MPaでホットプレス(HIP)してセラミックス試料を作製し、ゼーベック係数、導電率、熱伝導率、ホール係数の測定を行う。用いる機器類は、全て既設である。一方、これらの一連の実験を行うためにはSUS製るつぼ、高純度試薬ミリングポット・ボール等の消耗品が必要となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
サファイア基板の供給元である台湾のメーカが基板の製造を中止したため購入に際し納品期日が平成28年度内に不可能であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
国内で該当する製品を供給できるメーカを見いだしたので改めて平成29年度に購入を行う。
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