研究課題/領域番号 |
15K06445
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
佐藤 泰史 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (90383504)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 蛍光体 / ペロブスカイト / 酸窒化物 / バンドギャップ |
研究実績の概要 |
平成28年度は、Pr3+を発光イオンとして賦活したペロブスカイト型蛍光体について、以下の項目を中心に検討した。①Ca0.6Sr0.4TiO3をホスト物質に用いて、(Ca+Sr) = 1.00に対するTi量とPr3+からの発光特性との関係を調べたところ、Ti = 1.00の試料が最も強い赤色発光を示し、Ti = 0.98~0.99および1.01~1.02の試料の発光は大きく低下することがわかった。また、Pr3+未添加試料について、Ti量とバンドギャップエネルギー(Eg)との関係を調べた結果、Ti = 0.98~0.99および1.01~1.02の試料のEgは、Ti = 1.00の試料に比べて減少した。これは、Ti = 0.98~0.99および1.01~1.02の試料では、Eg内に多数の欠陥準位が伝導帯または価電子帯近傍に形成されることで、見かけ上、Egが減少したためだと考えることができる。以上のことから、Ti量の増減に伴う発光特性の低下の原因は、ホスト物質内に生成した欠陥が、ホストからPr3+への励起エネルギーの伝達を阻害するためだと解釈できる。②Pr3+を賦活したCaZr1-xTaxO3-xNx固溶体について、Zr-TaおよびO-N比を制御することでEgをコントロールし、EgとPr3+の励起・発光特性との関係を調査した。x値の増加に伴い、固溶体のEgは5.4eV(x = 0.00)から3.2eV(x = 0.05)へと減少し、さらにx = 0.75では3.0eVまで減少した。一方、励起エネルギーはx値の増加に伴い長波長側へシフトし、x=0.75において最大励起波長:374nm(3.1eV)を示すと共に、近紫外領域の励起光によるPr3+からのf-f発光(発光波長:612nm)を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①のTi量変化と発光特性の関係に関しては、ホスト物質のカチオン組成の精密な制御が発光特性の最適化に対して非常に有効である事を示している。この点は、蛍光体の試料作製ならびに発光特性評価において大変重要であると考えている。一方、②のペロブスカイト型酸窒化物-酸化物固溶体によるバンドギャップエネルギー(Eg)と励起エネルギーの制御に関しては、系統的な組成制御によりEgをコントロールする事で、予想通りの励起・発光特性を観察する事ができた。加えて、Egを3.0eV付近に制御する事で、近紫外光領域の励起光によるPr3+の赤色発光の発現を確認した。これらの点については、線スペクトルを示すf-f発光の実用化に対して、大変意味のある結果と言える。以上の事を踏まえて考えると、現状として概ね順調に進展している判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、Pr3+を賦活した酸窒化物-酸化物固溶体におけるバンドギャップと励起および発光エネルギーとの関係を検討していく。従来のTa5+とZr4+の組み合わせに加えて、Ta5+とHf4+との組み合わせについても検討する。Hf4+は周期表ではTa5+と隣同士のd0電子系金属イオンであり、Zr4+に比べて化学的にもTa5+との相性が良い事が期待できる。また、CaとTa-Zr(またはTa-Hf)間のカチオン比率とPr3+からの発光特性との関係を検討し、更なる発光特性向上を目指す。加えて、高純度のZrおよびHfの塩化物を用いて、両金属の水溶性金属錯体を新規に合成し、試料純度の問題からこれまで実験が困難であったPr3+賦活CaZrO3およびCaHfO3のカチオン比に対する発光強度の変化を詳しく調査し、ペロブスカイト型蛍光体におけるカチオン比率と発光特性との関係を明らかにする。
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