平成29年度は、主に以下の3項目に注力した。 ① ペロブスカイト酸窒化物固溶体CaHf1-xTaxO3-xNx:Pr3+(CHTON:Pr)に対して、バンドギャップエネルギー(Eg)と発光特性との関係を検討した。CHTON:PrのEgは、Ta5+およびN3-の増加に伴い、5.0eV以上(x=0.0)から2.5eV(x=1.0)まで減少した。各試料の発光特性を評価したところ、x=0.25~0.50の試料は、近紫外線照射下においてPr3+の赤色発光を示した。このPr3+のf-f発光の起源は、CHTON:PrのEgが2.6~3.0eVの範囲であることから、近紫外光照射によりバンド間遷移を介して励起された電子がPr3+へエネルギー伝達した結果として解釈できる。 ② Pr3+を賦活したダブルペロブスカイト型Ca(Lu0.5Ta0.5)O3:Pr(CLTO:Pr)は、Bサイトカチオンが形式上、同じ電子配置であるCaHfO3:Pr(CHO:Pr)に比べて約5倍も高い発光強度を示した。これは、Lu3+とTa5+の両方がBサイトを占有するCLTO:Prでは、Pr3+が占有するCaサイト周りの対称性がCHO:Prに比べて低下することが理由として挙げられる。 ③ 水溶性Ti錯体を用いて合成したCaTiO3:Prの発光特性は、化学量論組成近傍でのCa/Ti比の変化に対して鋭敏に変化し、特にCa/Ti比が1~2%高い試料では低下する。高解像度TEMを用いて単粒子の観察を行った結果、高い発光特性を示す低Ca/Ti比の試料では単粒子内の欠陥はほとんど観察されないが、Ca/Ti比の高い試料では単粒子内にCaに関係する多数の積層欠陥が観察された。このことから、Ca/Ti比の高い試料における発光特性の低下は、主に単粒子内に生成した積層欠陥が関係していると考えられる。
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