研究課題
本研究は、従来のナノミスト堆積法に独自の改良を加えて金属元素の組成を制御可能とし、傾斜機能構造を有する透明導電膜の作製技術を確立してスマートウィンドウや有機EL素子に応用可能な透明電極を作製することを目的として遂行された。平成29年度の研究では、(1)新規ナノミスト成膜装置(ミスト放出時混合方式)の作製および組成制御の確立、(2)傾斜機能薄膜の作製、組成分析および特性評価、(3)有機EL素子の作製および特性評価について実施する計画を掲げた。先ず、(1)のナノミスト成膜装置(2 ch)を作製し、それぞれのチャネルから酸化インジウム(IO)薄膜作製用溶液およびSnO2薄膜作製用溶液の両ミストを所定の組成比で噴霧可能なソフトウェアを開発・導入した。これにより、InおよびSnの組成を制御したIn-Sn-O系薄膜の作製に成功した。ついで、(2)に関して動的組成制御に関する成膜タイムチャートを作成し、基板上に120 nm厚のIO薄膜(0 at.% Sn)を堆積させ、連続的に0から50 at.% Snまで組成を傾斜させた120 nm厚のIn-Sn-O系薄膜を積層させた。装置不調により、XPSによる深さ方向の組成分析は実施できなかったが、XRDの2θスキャン(θは低角に固定)から深さによってピークシフトが生ずることを知見した。IOにSnを置換固溶させたITOはSn添加量の違いにより格子定数が変動することが報告されており、前述のピークシフトは深さ方向に組成が異なることを示唆する結果と考えられる。(3)については、抵抗率1×10-3 Ω・cm以下のIn-Sn-O系傾斜機能膜が得られておらず、有機EL素子への応用は達成しなかった。
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Proceedings of the 24th International Display Workshops 2017
巻: - ページ: 1272-1273