研究課題/領域番号 |
15K06449
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
有沢 俊一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 超伝導物性ユニット, 主幹研究員 (00354340)
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研究分担者 |
遠藤 和弘 金沢工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50356606)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 走査SQUID顕微鏡 / 超伝導体 |
研究実績の概要 |
超伝導体中では磁束が量子化されるが、層状構造を持つ酸化物超伝導体ではその大きな異方性から、磁束量子は大きく扁平したジョセフソン磁束となる。Bi系超伝導体は固有ジョセフソン効果を発現する代表的材料であるが、薄膜を材料として用いることが実用化上必須である。一方、同効果を用いたデバイス作製には、磁束の微視的挙動の解明が不可欠である。本研究では走査SQUID(超伝導量子干渉素子)顕微鏡を用いて非c軸配向のBi系超伝導体単結晶薄膜を観測し、固有ジョセフソン効果を利用したデバイス作製を目指してジョセフソン磁束の挙動を直接観察することにより可視化するものである。 3年計画の初年度となる本年度においては、前述の走査SQUID顕微鏡による観察に必要な薄膜の向上および予備的な研究を実施した。 良質な薄膜を得ることは本研究の成否を大きく左右するものである。このため本年度は低温物性評価装置の改良、X線回折法などによる評価手法の改善と、評価結果に基づく薄膜作製プロセスへのフィードバックなど、材料となる薄膜の品質向上を行った。非c軸配向膜は作製条件の範囲が非常に狭く、膜質も非常にデリケートである。低温下での抵抗-温度特性、電流-電圧特性などの超伝導特性評価に関しては、液体ヘリウムを消費せずに測定する環境の改良を行って実施した。これらの評価結果を薄膜作製プロセスにフィードバックすることにより、最終的に観察対象とするために必要な良質な薄膜を得るための知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述のように、本年度は、課題遂行に必要な材料の品質向上を目指した。走査SQUID顕微鏡による測定と材料の合成・評価は平行して行う予定であったが、試料となる材料の改善を優先させるほうがより良い結果に結びつくと判断した。このため、低温物性評価装置の改良、X線回折法などによる評価技術の改善と、評価結果に基づく薄膜作製プロセスへのフィードバックなど、薄膜の品質向上に注力した。 これらにより、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究においては、高品質の薄膜を使用することが非常に重要である。今後は、引き続き非c軸配向膜の構造や超伝導特性の特性向上を進めるとともに、微細加工試料で予備実験を進め、実際の測定まですすめてゆく。 構造に関しては、非c軸配向というBi系超伝導体では極めて特異な構造を持つ薄膜のX線回折法による評価法をさらに進める。超伝導特性に関しては、測定装置の改良も行ってゆく。ここから得られた情報を用いて、薄膜作製プロセスへのフィードバックを行い、本研究に適した材料の作製を目指す。 また、電流電圧特性の評価や、電流印加下での観察を行うためには、単なる膜ではなく、微細加工を施すことが不可欠である。微細加工は試料にダメージを与えることが多いが、加工を施した状態でも十分な超伝導特性が得られるかも検証してゆく。ダメージが大きい場合はアニールなども検討する。そして電流電圧特性などから、ジョセフソン磁束の動きを観測するのに適した温度を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、当初の計画と比べ走査SQUID顕微鏡を用いた測定よりも、薄膜の合成と超伝導特性の評価を優先させたことにより、多額の費用のかかる液体ヘリウムを用いた実験が28年度以降となり、費用の発生する時期にずれが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
品質の高い薄膜をまず作製することにより予備実験の回数を減らし、液体ヘリウムを使用する走査SQUIDを次年度以降とする。これにより、高い成果が得られるものと考えられる。
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