研究課題/領域番号 |
15K06452
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
大津 直史 北見工業大学, 工学部, 准教授 (10400409)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | チタン製インプラント / 硬組織適合性 / 抗菌性 / アパタイト被膜 / 銀 |
研究実績の概要 |
本研究では人工関節置換術の術後予後不良の原因となる3つのリスク、すなわち「インプラントと骨との固着不良」、「術中術後の感染症」、「インプラントの破損」を大幅に低減できる、極薄の難剥離性Ag含有アパタイト被膜をチタン材料表面に形成するための新しい表面処理技術の開発を目指している。我々が考案した「ハイドロキシアパタイト粉末と硝酸銀水溶液を混練して調整したスラリー状処理剤中に、チタン基材を完全に埋没させて、そのままスラリーごと熱処理する」という斬新な処理プロセスを用いて、抗菌性、骨親和性および難剥離性を併せ持つ高機能被膜を、チタン基材上に、ワンステップかつローコストで形成する技術の開発をおこなっている。 この目的を達成するために、平成27年度(前年度)は被膜形成のための表面処理条件の検討をおこない、さらに形成した被膜の透過電子顕微鏡による評価、並びに被膜からのAg溶出挙動の解析をおこなった。 平成28年度(当該年度)は、上記成果を踏まえて、この表面処理技術で形成した被膜の生体機能の評価をおこなった。具体的には、材料表面にヒト骨芽細胞様子肉腫細胞(Saos-2)を播種して、細胞毒性及び骨形成性能を評価した。 細胞評価の結果、スラリー処理にて形成した被膜はAgを含有しているが細胞増殖の抑制は観察されなかったので細胞毒性を示さないことがわかった。さらに、アパタイト被膜を有するチタン材料は被膜を持たないチタン材料と比較して骨芽細胞様細胞の石灰化が著しく速く、被膜形成によって硬組織適合性が向上することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、当該年度に抗菌性評価をおこない、次年度(平成29年度)に細胞培養を用いた試験をおこなう予定であった。しかし、研究計画の見直しをおこなったところ、細胞培養実験を先におこなったほうが良いと判断したため、当該年度に、次年度実施予定の細胞培養実験をおこなっている。 細胞実験を通じて、本表面処理技術で形成した被膜が生体適合性を有するとともに、未処理材料と比較してその周囲における骨形成が促進されることが示唆され、細胞実験レベルで本表面処理技術の有用性を示すことができた。 従って、当初計画における平成28年度予定の実験は実施できていないが、平成29年度予定の実験を完遂することができたので、順調に研究は進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、平成28年度実施予定であった抗菌試験をおこない、スラリー処理で形成したAg含有アパタイト被膜の抗菌性能をグラム陽性及び陰性菌の2種類に関して評価する。さらに抗菌性の有無だけでなく、その性能の持続性を調べて、本表面処理技術で形成された被膜の実用性についても考察する。 最後に、これらの成果をまとめて、本研究の総括をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は、当初研究計画を変更して、次年度予定であった実験研究を先に実施した。そのため、当該年度に導入予定であった「正立型蛍光顕微鏡(1,800千円)の導入を、次年度に持ち越すことになってしまった。それ故、一部の助成金を次年度に繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額と次年度交付額を合算して、当該年度予定であった正立型蛍光顕微鏡の導入をおこなう予定である。
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