はじめに,水蒸気(微量酸素を含む)雰囲気中でFeおよびFe-Cr合金の酸化挙動を,後段に設置した酸素センサーと水素センサーで調べ,水蒸気酸化に及ぼす酸素濃度の影響について検討した.水素センサーで連続的に測定した水素分圧から発生水素量を求め,酸化増量を算出したところ,実験前後に秤量した酸化増量とよく一致した.水素センサーによる連続水素分圧測定法では,換算して時々刻々の金属の酸化速度を求めることができ,積分量である酸化増量を求める熱天秤法よりも細かい解析ができることが立証できた.酸素センサーで求めた酸素分圧変化から酸化に寄与した酸素消費量を算出できた.また,水素センサーで求めた水素分圧変化から水蒸気の解離で発生する水素発生量を算出でき,あわせて酸素消費量を算出できた.そして,酸素消費量を解析して得られた酸化増量は天秤法で得られた値とよく一致した.水蒸気中で酸化した場合には,水蒸気のみの酸化しか起こらなかった.500ppm酸素と1%酸素の全体の酸化速度と消費酸素量から求めた酸化速度を比較すると,1%の酸素雰囲気中では酸素消費酸化のみで水蒸気酸化は進行しなかった.一方,500ppm酸素では水蒸気と酸素により酸化が起こった. 次に水蒸気雰囲気下におけるFeおよびFe-Cr合金の酸化速度を後段に設置した水素センサーおよび酸素ポンプ・センサーで調べ,これらの水蒸気酸化挙動を検討した.900℃の等温酸化において水素センサーにより測定された酸化速度と酸素ポンプ・センサーにより測定された酸化速度は同じ値を示した.昇温酸化において900℃付近において母材の変態にともなうと推察される酸化速度の減少が観察された. 水素センサーおよび酸素ポンプ・センサー法はともに,水蒸気酸化過程における酸化速度を連続的に測定できるため,水蒸気酸化挙動の検討に有効な方法であることが明らかとなった.
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