研究課題/領域番号 |
15K06455
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
井上 雅博 群馬大学, 先端科学研究指導者育成ユニット, 講師 (60291449)
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研究分担者 |
牟田 浩明 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (60362670)
林 大和 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60396455)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 導電性ペースト / 電子実装材料 / 銅フィラー / 界面化学現象 / 表面酸化 / パーコレーション |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に得られたエポキシ系バインダを用いた場合の結果基づいて、フェノール系バインダ(レゾールフェノール)を用いて大気キュア可能な銅系導電性接着剤の作製を試みた。銅フィラーをバインダと混合する前に所定のアミンやカルボン酸で表面処理を実施したところ大気キュア可能な銅系導電性接着剤を作製することができた。150~200℃でキュアしたところ、数十μΩcmの電気抵抗率が実現できた。 キュア後に得られる電気抵抗率は表面処理に使用する処理剤の種類によって大きく異なった。特に脂肪族アミンと脂肪族カルボン酸が電気抵抗率を低下させるために有効な表面処理剤であることがわかった。 大気キュア後の試料の断面微細組織を観察したところ、銅フィラーが集合したドメインが連結した凝集構造が発達していることが示唆された。この微細組織発達は、銅フィラーのネッキングを伴って進行している可能性があり、今後、詳細な検討を行う。 脂肪族アミンと脂肪族カルボン酸はともに電気抵抗率低減に有効な表面処理剤であるが、湿熱環境曝露を行った場合の電気抵抗率変化には大きな違いが生じた。脂肪族カルボン酸を用いた場合には銅フィラーの酸化を抑制することができず、電気抵抗率が大きく上昇した。一方,脂肪族アミンを表面処理剤として用いた場合には湿熱環境曝露による電気抵抗率上昇は明確に抑制された。湿熱環境曝露後の試料の微細組織観察により、脂肪族アミンは銅フィラーの酸化抑制に有効な表面処理剤であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
銅系導電性接着剤の挙動の全体像を把握するためには、エポキシ系以外の樹脂バインダを用いた場合の挙動についても調べておく必要がある。本年度はレゾールフェノール系バインダを用いてモデル材料を試作したが、昨年度得られた結果に基づく予測とほぼ一致する形で導電性接着剤の開発を行うことができることがわかった。このことから、大気キュア可能な銅系導電性接着剤の作製に重要な役割を果たしているのは、脂肪族アミンや脂肪族カルボン酸など銅と錯体形成を起こすような官能基を有する有機分子であることが示唆された。また脂肪族カルボン酸を用いた場合には、銅フィラーの酸化は抑制できないことも明らかになり、酸化抑制そのものが電気抵抗率を低下させるメカニズムではないことも明らかになった。以上のことから、次のステップのメカニズム解析のための周辺情報が抑えられたと考えており、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、本年度の研究により、大気キュア可能な銅系導電性接着剤の作製には、銅フィラーと特定の有機分子の化学的相互作用を利用することが重要であることが示唆された。 今後は、この化学的相互作用の実態と、それによって引き起こされる導電性接着剤中の微細組織発達などをキュアプロセス解析を通じて調査することを予定している。また、キュア後の試料の電気伝導特性を直流のみならず交流測定も実施し、試料内の導電パスのモデル化を実施する予定である。
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