研究課題/領域番号 |
15K06456
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
山根 敏 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (10191363)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | コンピュータ制御 / 溶接電源 / 電源特性 / ワイヤ送給装置付きトーチ / パターンマッチング |
研究実績の概要 |
溶接ロボットを用いて、3次元造形システムを構築するために、オンライン制御可能なコンピュータシステムの試作を行った。本システムでは、ガスメタルアーク溶接に基づいて、システムを構築している。このシステムでは、金属の積層を行うために、ワイヤ送給速度制御および溶接電源が重要な役割を果たす。本年は、パソコンでオンライン制御可能な溶接電源の試作を行った。特に、その性能は、電源の電圧・電流特性に依存している。そこで、その特性を非線形特性とした。この特性の特徴は、アーク長が規定値より短くなると、溶接時の電圧電流の動作点が電源特性よりも下側になり、自動的に電流が増加することである。動作点と電源特性の曲線との差を用いており、その制御性能も良い。一般の定電圧特性と異なり、定電流と定電圧を組み合わせて、ここでは非線形にして特性を構築した。具体的には、パソコンにAD変換器およびDA変換器を装着し、溶接電流をAD変換器を用いて検出し、その時の溶接電源の出力電圧が所望の電圧になるように、DA変換器の出力を用いて溶接電源内のPWM制御装置に指令値を与えるようにした。 また、本システムでは、溶着金属を自動で積層する際に必要な狙い位置の決定のために、CMOSカメラを用いて溶融池の撮影および画像処理を行った。アーク光の影響を避けるために、990nmの干渉フィルタを用い、溶接電流が60Aのときに撮影を行った。溶接ではスパッタやヒュームなどが発生する場合があり、CMOSカメラを用いて撮影すると、これらにより明瞭に溶融池が撮影できない。この影響を避けるために、溶融池の特徴を抽出し、パターンマッチングによる認識方法を試みた。その結果、従来、溶接線の検出が困難であった場合でも容易に溶接線を検出できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
トーチの試作を試みていたが、ワイヤ送給モータの温度特性などを考慮して、最適な形状のものが必要になった。そこで、市販のものを改造して行う方向に計画を変更した。このために、改造可能なワイヤ送給装置の選定に時間がかかった。また、ロボットへ搭載する予定であったが、基礎実験での溶接現象の確認のために、2軸の走行台車を構築した。このシステム構築にも時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
溶接電源のオンライン制御、溶接線検出の画像処理方法の確立、オンライン制御可能なワイヤ送給装置の改造などが終わったので、これらを2軸走行台車に組み上げて、総合的な実験を行い、溶接現象の確認および溶着金属の効率的な積層方法を行っていく。高速度ビデオカメラも導入し、電流・電圧・ワイヤ送給速度の時間的な変動も記録し、現象の解明を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の校正および別刷およびワイヤ送給モータの電力駆動装置のために、費用を確保していた。論文については、再実験などにより、作成が年度内に終わらず、来年度になった。一方、送給モータのドライバは特殊な受注生産のために、納期が3か月以上となり、該当年度に購入ができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度中に、論文の執筆を行い、これに使用する。また、ワイヤ送給モータの電力駆動装置も平成28年度中に納品される予定である。平成28年度は当初計画の通りに、制御システムの統合のためのハードウェアおよびソフトウェアの開発費ならびに、成果発表のために、予算を使用する。
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