CMC材料は耐熱軽量構造部材への適用が期待されているが、そのためには、高温環境下での損傷挙動を把握する必要がある。そこで本研究では、位相シフトFBG(PSFBG)を用いた光ファイバAEセンサシステムにより、複合材料の高温下での損傷進展挙動を把握可能にすることを目的とする。 最終年度においては、前年度に構築した再生FBGおよび遠隔AE計測法について、高温環境での実用的な性能評価を行なった。まず、1000度での超音波計測により、PSFBGから形成した再生FBGは感度と応答周波数帯域に優れていることが確認できた。次に、遠隔AE計測法では、光ファイバウェーブガイドの耐久性を確認するため、1100度の高温状態で8時間保持した後に計測を試みたところ、その計測性能は低下せず、十分な耐熱性を有することが確認できた。さらに、CFRP積層板において、PSFBGセンサで計測したAE信号に逆解析を施すことで、その発信源となる損傷の形態を推定することを試みた。すると、超音波減衰の強い複合材料においても、逆解析によって、正確な損傷形態の同定を行なえることがわかった。 そして補助事業期間全体にわたる成果をまとめると、まず、PSFBGを用いた遠隔AE計測法を確立することで、1000度レベルの高温環境においてもAE波形を正確に計測可能となった。さらに、得られたAE波形から、その発信源となる損傷形態も推定できた。また、PSFBGから再生FBGを形成することで、高温での直接的な超音波受信も可能にした。これらは、CMC等の耐熱複合材料の、高温環境下での損傷進展挙動を把握するために極めて有用な計測手法になりうる。
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