パワーモジュールのセラミック基板と銅回路の接合でより高い信頼性と製造プロセスの簡素化が求められて,新しいコーティング技術であるコールドスプレー(Cold Spray:CS )法により,セラミック基板と銅回路の直接形成の技術開発を行なってきた。CSは,低熱変質などの優れた皮膜特性を持ち,銅回路とセラミック基板の間に薄いアルミニウムのボンド層を形成し接合性を改善する。そのため,前年度までの成果をまとめて発表し,かつ薄く平坦な金属皮膜作製のため技術開発の課題解決を中心に行った。 コールドスプレーにおける皮膜の平坦化を狙った矩形断面ノズルの開発の成果として,矩形断面ノズル末広部長さと平行部長さの比の最適化や,ノズルコーナー形状の影響を数値シミュレーション(CFD)で検討してノズル設計の指針が得られ,実際にノズルを製作して,銅皮膜の付着率や組織,スプレーパターンの平坦化が実証したこれらの結果を国際溶射会議ITSC2017と日本機械学会年次大会などで発表を行い,複数の企業から打診があった。 前年度のステンレス鋼製矩形断面ノズルに銅粒子の堆積が生じる課題に対して,ノズル肉厚を薄くして水冷することである程度回避でき,ノズルの付着防止には薄肉化も含めたノズル内面の温度を上げないことが重要であることが確認できた。 セラミックと銅皮膜とのボンドコート用のアルミニウム皮膜平坦化のために,アルミニウム粒子の付着しにくい耐熱性の高い特殊樹脂製コールドスプレー矩形断面ノズルを作製して成膜を行い,平坦な皮膜ができた。しかし,樹脂製のためガス温度に制限が生じ,長時間の使用にはノズルの十分な冷却が課題として顕在化した。
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