最終年度にあたる本年度は、本課題研究のまとめとして、フィラー/ポリマー間界面相互作用を制御しつつ、ポリマー中へのフィラーのナノ分散を達成することができる手法により調製したシリカ/ポリプロピレン(PP)系およびシリカ/エポキシ樹脂系ナノコンポジットの特性評価を中心に実施し、両コンポジット系の実用化のための以下の知見を得た。 PP系では、前年度までに、樹脂母相と適度なぬれ性(付着力)を持たせたコロイダルシリカとの複合化により剛性と伸び性・靱性の両立させることができる可能性が見いだされたので、これら機械的特性が最も優れた値を示す最適なPP母相とのぬれ性を明らかにした。なお最適なぬれ性は、分散させるシリカ表面への界面活性剤吸着量を制御することで容易に実現でき、フィラー/ポリマー母相界面制御型ナノコンポジットを簡便に調製可能であることを実証した。エポキシ樹脂系では、コロイダルシリカと樹脂間の界面での水素結合が樹脂母相の熱膨張抑制に寄与するという前年度までに導かれた予想を、分散シリカとの界面近傍でのエポキシ分子鎖の熱運動性を定量的に評価することで実証することを試みた。さらに、この界面相互作用が樹脂母相の耐熱性向上にも寄与することも明らかにした。 以上、ナノ分散したシリカフィラーとの界面制御によるポリマー系コンポジットの特性向上を、特性発現メカニズムの観点から実証する基礎データを蓄積することができ、実用化に繋がる知見を得た。なお後者のコンポジット系については、高熱伝導性の付与も視野に入れたエポキシ樹脂中へのナノシリカとサブミクロンサイズの六方晶窒化ホウ素の同時分散にも取り組み、フィラー表面改質を施さないことで、熱膨張の効果的抑制に加えて熱伝導性の大幅向上を達成した。さらに、ナノポンポジットの樹脂硬化前の流動性評価によりコンポジットの成形加工性にも大きな問題は生じないことを確認した。
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