研究課題/領域番号 |
15K06464
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
川上 博士 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00252338)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 酸化膜破壊 / 周期運動 / 表面粗さ |
研究実績の概要 |
平成27年度は,大気中自発的溶融・凝固プロセス制御の高効率化および異種材料間に存在する酸化膜破壊の力学的条件の解明について調査・検討を行った.大気中自発的溶融・凝固プロセス制御の高効率化に関しては,一般的には接合界面を接触させる方法として静的荷重による密着を行うが,この方法ではアルミニウム金属表面に密着し物質移動を妨げるアルミニウム酸化膜を効率的に破壊することができない.そこで,酸化膜破壊効率を上げるために周期的に接合界面同士を衝突させることで酸化膜破壊効率を改善する方法について検討した.衝突回数が多いほど酸化膜破壊の機会が多くなると考え,周期運動周波数の影響を調べた. 異種材料間に存在する酸化膜破壊の力学的条件の解明については,周期運動付与による接合界面マイクロ変形に着目した.本接合温度範囲での変形機構としては静的定荷重下であればクリープ変形であり,接合界面周期的運動が与えられる場合はクリープ変形と動的荷重履歴による変形の組み合わせによる複合変形と考えられる.マイクロ変形が大きい接合条件において酸化膜破壊効率が高くなると考え,周期運度運動付与前後の接合界面マイクロ変形量を比較した.接合界面マイクロ変形を定量化するために表面粗さを指標として用いた.本研究では表面粗さ測定にマイクロスコープを用いることとした.マイクロスコープを用いるメリットとしては,非接触測定であるため測定表面損傷を防ぐことおよび一般的な測定データとなる断面曲線以外に3次元表面形状データを得ることが挙げられる.断面曲線に対してはガウシアンフィルターを用いたノイズ除去処理を行った.周期運動周波数を一定とした条件において,初期表面粗さおよび周期運動中最大荷重の影響を調べた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大気中自発的溶融・凝固プロセス制御の高効率化に関して,周期運動周波数の影響を調べた結果,以下のことが分かった.低周期運動周波数条件範囲では周波数の増加とともに接合開始時間が短くなった.すなわち,接合界面同士の衝突回数が酸化膜破壊効率を決定することが分かった.しなしながら,高周波数条件では周波数を増加させても,接合開始時間は短くならなかった.この結果より,最適な周期運動付与条件があることが示唆されたが,今回得られた結果に関する詳細な機構については現時点では不明である. 異種材料間に存在する酸化膜破壊の力学的条件の解明に関しては,周期運動付与前後の断面曲線を比較した.マイクロスコープにて得られた断面曲線はJISで定められたガウシアンフィルターにてノイズ除去を行ったあとに表面粗さを得た.フーリエ変換により断面曲線を解析したところ,本実験範囲では断面曲線の中に除去すべきうねり成分が含まれなかった.初期表面粗さの大きさにより,表面粗さの変化傾向が異なった.初期表面粗さが小さい場合,周期運動付与後の表面粗さは増加した.反対に初期表面粗さが大きい場合には,周期運動付与後の表面粗さは減少した. 以上のように,原因究明については不十分であるが,新事実を明らかにしている.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度においては大気中自発的溶融・凝固プロセス制御の高効率化および異種材料間に存在する酸化膜破壊の力学的条件の解明について継続して検討する.前者に関しては,影響因子を周期運動中最大荷重に変更して接合結果との関係性を明らかにする.最大荷重の増加にあたっては高温材料強度との関係で接合温度を低温化することを考える.また,力学的条件だけでなく材料科学の見地からの高効率化手法を検討する.接合温度の低温化を目指し,インサートメタルをアルミニウムとの共晶温度がこれまで用いてきた銅に比べて低くなる材料を選定する.後者に関しては,検討範囲を拡大して初期表面粗さ,界面運動付与状況と接合界面マイクロ変形量変化傾向との関係性を調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に購入したマイクロスコープ購入費用が本年度予算額に対して、予想よりも大きな割合を占めた。そのため、単価の高い物品を購入するには残額が不足となった。残額は持ち越して次年度配分額とあわせて使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
現時点では、マイクロスコープおよび既設の装置で実験計画進行は十分行うことができる。平成27年度に購入を控えた物品に関しては、研究の進行状況を考慮して購入を検討したい。その他の少額物品に関しては、予定通りに購入する予定である。
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