本研究ではアルミニウム合金とマグネシウム合金の異材接合におけるTiインサートを用いたレーザブレイジングの適用性を評価し、異材接合部の組織解析および接合継手の機械的特性を評価するとともに、プロセスパラメータの最適化を行った。また、接合性に及ぼすインサート材の効果を解明し、インサート材の最適化を行うことを目的とした。昨年度の研究でインサート材を用いることで直接反応による脆弱な金属間化合物の生成が抑制され強度が増加したことから、本年度はチタンインサートを挿入してレーザブレイジングを行った。ビード外観や組織解析および継手強度を調べ、また、レーザ出力やレーザ走行速度、ワイヤー供給量などのプロセスパラメータの影響を調べ、最適化を行った。さらに、インサート材を用いてレーザブレイジングを行った際のレーザブレイジング過程における温度履歴を計測することでインサート材の効果を解明し、異材接合におけるインサート材を用いたレーザブレイジングの適用性および指針を得た。 マグネシウムろう材AZ91を用いてTiインサートの厚さを変えレーザブレイジング継手の機械的特性を評価した。Tiインサートの厚さに関わらず、900Wで母材破断が起き継手強度は最大値を示した。レーザ出力が増加するとろう材内での破断が生じて引張せん断強さは低下した。組織観察の結果、破断の原因は引張変形中にろう材内に形成される金属間化合物に亀裂が発生し、伝播することでろう材内破断が起きると考えられた。 以上のことより、本研究ではTi/A5052界面およびTi/AZ91界面が金属間化合物を介して接合する出力条件を確保し、ろう材内の脆弱な金属間化合物が比較的少ない900W以下の条件範囲において高い継手強度が得られることが分かった。本条件範囲ではインサート厚さに依らず、レーザ出力が800W-900Wの範囲において、良好な継手特性が得られることが分かった。
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