研究課題/領域番号 |
15K06466
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
岡田 達也 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (20281165)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 双晶化 / リップル |
研究実績の概要 |
本研究は,次世代省エネパワーデバイス材料として期待されているシリコンカーバイド(SiC)単結晶上に,ニッケル(Ni)オーミック電極を形成する新しい手法を提案するものである。具体的には,SiC上にNi薄膜を蒸着した後,Ni/SiC界面をSiC側からフェムト秒(fs)レーザーにより照射し,Ni/SiC界面付近にひずみを導入した後,低温アニールを行うことにより拡散を促進することを狙いとしている。 平成27年度はfsレーザー装置の移設に伴う長期間の故障という事態に遭ったため,Ni/SiC界面へ連続波(CW)レーザーを照射して,熱的アニールを行った。CWレーザー照射はfsレーザーとは異なり温度上昇を伴うため,従来型の電極形成に用いられているフラッシュランプなどによるアニールとよく似た結果が得られるものと予想していた。ところが,非常に興味深いことに,CWレーザー照射を行った試料においてNi薄膜が双晶化する現象が見出された。SiC結晶との方位関係の解析結果から,Niの双晶化は,蒸着により形成したランダム方位のNi多結晶から,SiC基板結晶とマッチングの良い方位を持つ双晶がCWレーザー照射に伴う温度上昇によって,選択的に成長した結果と解釈することができた。 年度末期にfsレーザーの修理が完了したため,照射を再開した。条件出しを行っていく中で,ダイヤモンド単結晶上にアルミニウム(Al)薄膜を蒸着した試料にfsレーザーを照射したところ,Al/ダイヤモンド界面にリップルと呼ばれる微細周期構造が形成する現象が発見された。 以上の様に,本来の研究目的とはやや離れた内容で興味深い実験結果が得られた。今後は本来の研究を進めることと並行して,これらの探究も進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度において,フェムト秒(fs)レーザー移設に伴う故障という事態に遭ったため,本来行うべきNi/SiC界面へのfsレーザー照射を行うことができなかった。一方で,連続波レーザー照射によるNi双晶化や,fsレーザー修理完了後の条件出し実験中に,Al/ダイヤモンド界面へのfsレーザー照射に伴う界面リップル形成という興味深い現象を発見することができた。本来の研究が進んでいない一方で,新しい展開も起こったため,「やや遅れている」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度末期に修理が完了したフェムト秒(fs)レーザーは順調に稼働している。特に,照射エネルギーが故障前よりも安定しているこをと確認した。平成28年度においては,本来予定していたNi/SiC界面へのfsレーザー照射と,界面ひずみ層の本性解明を進める。特に,Ni/SiC界面全面にひずみ層を導入するために必要な照射条件の探索に注力する。 上記の実験を最優先で進める他に,連続波(CW)レーザー照射に伴う温度上昇シミュレーションや,Al/ダイヤモンド界面へのfsレーザー照射を行い,新たな展開を模索する。これは,CWレーザー照射を低温アニールに応用することを新たに発想したためである。fsレーザー照射に続いてCWレーザー照射を行うことにより,レーザーのみのプロセスでSiC上への電極形成を目指す。また,ダイヤモンドについても,優れた物性値を有する材料であることから,fsレーザー照射による非熱的改質の探索を継続する価値があるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた機種よりも安価な蒸着装置を導入したため。(メーカーとの検討の結果,性能的に十分であると判明した。)
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次年度使用額の使用計画 |
物品費(消耗品)に使用する。
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