セルロースナノファイバー(CNF)分散流体の凝集について検討した。水に分散させたCNFは必ずしもきれいに1本1本が分散している状態であるとは限らず,凝集してダマとなっている可能性が指摘されている。このことは,CNFで薄膜などを成形したときに欠陥部となる恐れがあるため,できるだけ1本1本が分散している状態が望ましい。ダマがある状態でブレンダー等を用いて強く撹拌すれば,1本1本が分散している分散流体が作成できるが,事前に凝集物があるのかどうかを確認することができれば,撹拌の工程を省略することができ,凝集を定量的に評価する簡便な方法が求められる。本年は,CNF分散流体中の繊維の凝集状態を定量的に評価できないかを検討した。 そのために,CNF分散流体を2枚のガラス板の間に閉じ込め,レーザー光(直径0.8 mm)を透過させて,その透過強度を測定した。凝集物は小さいと思われるので,顕微鏡の対物レンズ(20倍)を用いてレーザー光を集光して約6μmの直径とし,空間解像度を高くしてピンポイントで測定ができるように工夫した。 その結果,ところどころレーザー光強度がやや低下する箇所が測定された。ただし,CNF分散流体は透明なため,この箇所に凝集物が存在しているのかどうかは目視できない。そこで,別途,同じCNF分散流体に墨汁を少量添加して凝集物を可視化する手法を試みた。凝集物は繊維が固まっているので,その部分には墨汁が浸透しにくく,凝集部分は透明のままであることが期待できる。しかし,この方法では凝集物は目視できず,レーザー光強度の低下の原因が本当に凝集物にあるのか,また別の要因にあるのかは特定できなかった。
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