研究課題/領域番号 |
15K06470
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
平栗 健二 東京電機大学, 工学部, 教授 (60225505)
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研究分担者 |
馬目 佳信 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (30219539)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | DLCコーティング / Zn徐放 / 骨芽細胞 / 生体親和性 / ドーピング |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究成果である毒性試験(MTT assay)の結果、骨芽細胞の活性化を基に、ダイヤモンド状炭素(DLC)膜に骨芽細胞の活性化を誘起する亜鉛(Zn)のドープ量の検討を進めた。そこで、実験条件を調整した試料から徐放されるZn量を把握するためにZn徐放試験を行った。24well plateにZn-DLCおよびNormal DLCを成膜した試料からZn徐放量を測定した。この測定には、細胞培養液(MEM-α)を1wellあたり1mL加えて試料を浸漬させ、96時間留置した後、溶液を抽出しICP質量分析(ICP-MS)で評価した。 上記のZn含有量の異なる試料を作製した後、徐放量の異なる培養液を用いて骨芽細胞の活性度を石灰化評価試験により行った。石灰化試験では、Alizarin redによるカルシウムの沈着箇所を染色で確認した。平成28年度の研究では、Zn量の増加に伴って骨芽細胞の活性度が向上する結果が得られた。その成果について「Zn-DLCから溶出したZnの骨芽細胞の活性化に与える影響」、「Zn-DLCの構造とZn溶出過程の検討」に関して5件の国際学会、6件の国内学会での公表を行った(研究発表参照)。応用物理学会では、招待講演の依頼を受け、学術界、産業界から大きな注目を集めている。また、これまでの公表成果を論文にまとめ、国際学会誌へ投稿している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度および平成28年度においては、申請時の研究計画に従った実験を実施し、概ね目標にしていた成果が得られている。初年度は、亜鉛ドープダイヤモンド状炭素(Zn-DLC)膜の作製方法を検討し、含有Znを制御する手法の開発を行った。Zn-DLCの作製条件を制御することで、DLC内に含まれるZn量を調整でき、培養液に浸漬した後の溶液からはZnの溶出が確認された。骨の再生には骨芽細胞の働きが重要であり、亜鉛(Zn)を与えることでその働きが活性化し、骨組織の再生が促進される結果が得られた。本研究では積極的に自己組織の回復促進機能や抗菌性を有するバイオマテリアルの開発を目的とし、骨形成及び石灰化、抗菌効果で知られているZnをDLCにドープしたZn-DLCを作製した。in-vitro試験では、基礎実験として行った異なるZn溶出量におけるマウス頭蓋冠由来の骨芽細胞(3T3-E1)に対する毒性試験(MTT assay)結果を得た。今年度(平成28年度)の研究では、Zn量に対する骨芽細胞への効果を特定し、その傾向を把握することが出来た。次年度へ向けて、基板材料としてSUSのみならずTiの検討を進める計画である。ここでの基材の選定は、生体内での骨形成過程の促進効果を同定するために、装着可能な形状や機械的な弾性特性を想定して選定する。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿った研究を実施する計画である。また、得られた成果による計画の一部追加を行う。亜鉛ドープダイヤモンド状炭素(Zn-DLC)膜をコーティングした試料を用いて、生体にインプラントした際の骨芽細胞の活性度を評価する。経時的にZnの溶出量が状況を把握するために、DLC試料の深さ方向でのドーピング量制御を検討する。これは、平成28年度に実施した組成評価結果を基に条件を再考する。今年度は、ガス種類の割合やターゲット材料の選択も視野に入れて計画を遂行する予定である。 また、機械的強度試験についても同様な評価を行ない、各条件により作製されたDLCについてインプラント材料としての特性を検討する。耐腐食性・耐摩耗性試験結果とDLCの物性評価の相関性を明らかにすることで、バイオマテリアルとしての定量評価を行なう。金属元素ドープしたDLCについて、元素溶出状態を検証した結果を用いて、骨芽細胞に対する評価を行う。評価にあたっては、骨代謝関連細胞の機能評価系として確立された方法を用いて行う。骨芽細胞の酵素マーカーとしては、アルカリホスファーゼを利用し、骨芽細胞や骨髄細胞から骨形成へ分化した細胞の染色を媒体として継続して検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
予算執行については次年度に繰り越した額は1,402円と少額であり、当初の予定に沿って計画通り実行できていると考えている。一方、有用な研究成果が得られたため、予定していた国際学会誌への投稿を前倒しするために、論文校正費を使用した。このため、その他の項目が増額になった
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次年度使用額の使用計画 |
繰越額については、次年度に繰り越して消耗品等に充当して使用する予定である。
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