研究課題
ダイヤモンド状炭素(DLC)膜は、抗血栓性や細胞親和性を持つバイオマテリアルとして期待されている。そのため、医療デバイスの表面処理技術として開発が進んでいる。近年、骨折治療において亜鉛(Zn)の骨芽細胞への寄与が解明され、Zn投与による骨組織が促進されることが注目されている。これらの背景のもと、本研究では積極的に自己組織の回復促進機能や抗菌性を有するバイオマテリアルの表面処理技術開発を目的とし、骨形成および石灰化で注目されるZnをDLCにドープしたZn-DLCを作製した。さらに、模擬生体内溶液(PBS)、血液中、生体組織内などの環境下での耐腐食性試験を行ない、バイオマテリアルとしてのZn-DLCの安定性評価を行った。実験条件を調整した試料から徐放されるZn量を把握するためにZn-DLCからのZn徐放試験を行い、質量分析(ICP-MS)で評価した。異なるZn徐放量に対するマウス頭蓋冠由来の骨芽細胞(3T3-E1)の毒性試験(MTT assay)結果を得た。MTT assayの結果からは適正なZn量のZn-DLCでは毒性が無いことが分かった。さらに、Zn徐放量の異なる培養液を用いて骨芽細胞の活性度を石灰化評価試験により評価した。石灰化試験では、Alizarin redによるカルシウムの沈着箇所を染色で確認した。染色観察からはZn徐放量の増加に伴って骨芽細胞の活性度が向上する結果が得られた。模擬生体内でのZn-DLCは、極めて安定であり、機能性バイオマテリアルとしてのポテンシャルが高いことが示唆された。それらの結果を「Zn-DLCからのZn量による骨芽細胞の活性化」、「Zn-DLCの構造とZn溶出過程の同定」とした発表を行い、研究成果の社会還元に寄与した(研究発表参照)。
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Diamoond and related Materials
巻: 77 ページ: 131-136
10.1016/j.diamond.2017.06.006