研究課題/領域番号 |
15K06472
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研究機関 | 福井工業高等専門学校 |
研究代表者 |
安丸 尚樹 福井工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (90158006)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フェムト秒レーザー / アブレーション / 表面硬化層 / 窒化・浸炭 / 硬質薄膜 / ナノ構造 / トライボロジー / 耐食性 |
研究実績の概要 |
γ系ステンレス鋼SUS304に対し,耐食性の劣化を防ぐために約400℃と比較的低温で窒化処理を行い,厚さ約10μmの硬化層(HV1000)を加工した.また,SUS304鋼と純Tiに対し,PVD法を用いてTiNやCrNの窒化物膜(HV1500~2000)を低温で2μm以上の厚さに成膜した. 次に,表面硬化層および窒化物膜にナノ構造を加工する条件を検討した.即ち,フェムト秒レーザーをスポットで固定照射し,レーザー強度と照射パルス数を変化させた時の照射痕の形状をSPMで測定することにより,アブレーション閾値や加工速度を求めた.また,SEMにより,ナノ構造の間隔や形状を観察し,ナノ構造形成のためのレーザー条件を明らかにした.次に,レーザースキャン技術を応用し,硬化層表面に平面状に均一なナノ構造を加工する技術を開発し,比較のため,未処理材の表面に対しても同様な照射実験を行った. ナノ構造を加工された試料に対し,表面分析装置により照射面の元素含有量,結晶構造,結合状態の変化等を分析し,表面物性に与えるレーザー照射の影響を明らかにした.また,ナノ構造が加工された表面硬化層に対し,ボール・オン・ディスク型摩擦摩耗試験機により,大気中乾式下で摩擦係数の変化をモニタリングし,周期的ナノ構造のトライボロジー特性に与える効果を検証する実験を開始した.さらにステンレス鋼の低温硬化層や窒化物膜に対し,レーザー照射による耐食性の劣化の有無を調べるため,電気化学測定システムを用いた分極曲線測定を開始した. なお純Tiについては、低強度で照射すると、波長の1/10以下の間隔でレーザーの偏光方向に平行な超微細な周期構造が形成される現象を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に基づいて,表面硬化層および窒化物膜にフェムト秒レーザーによりナノ構造を加工する条件の検討実験や照射面の解析・評価を行った.なお本予算で購入した電気化学測定システムを用いて分極曲線測定などの電気化学分析を行い,低温硬化層や窒化物膜の耐食性評価を開始した.特にTiのナノ構造に関して興味ある現象を見出し,学会に発表した.
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今後の研究の推進方策 |
ナノ構造を加工した低温硬化層および窒化物等硬質薄膜,さらにDLC等の固体潤滑膜を被覆した複合改質層に対し,各種雰囲気(大気中乾式下,水・油滴下)におけるトライボロジー特性の評価や耐食性の評価を継続して行う.得られた結果をレーザー照射条件や照射面への潤滑膜の蒸着条件等にフィードバックすることにより,最適な加工条件を明らかにし,他の金属材料に対しても波及効果の高いナノ構造付与高機能低温表面改質技術の開発へと結びつける.
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