研究課題/領域番号 |
15K06475
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
杉野 卓司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 無機機能材料研究部門, 主任研究員 (50357266)
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研究分担者 |
安積 欣志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 無機機能材料研究部門, 研究グループ長 (10184136)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | DNA / 高分子アクチュエータ / 均一分散 / 複合化 / センシング |
研究実績の概要 |
本研究課題ではナノカーボン高分子アクチュエータの高分子材としてDNA由来の高分子を用いることにより、変形応答の安定した、効率よく変形する高分子アクチュエータの開発およびDNAの持つ分子認識特性を応用した新規センシングデバイスの開発を目的として研究を進めている。今年度は、昨年度得られたDNA由来固体電解質とカーボンナノチューブがDNA高分子中に分散した電極膜から三層構造のアクチュエータを作製し、その変形応答を調べることを試みた。しかし、水分散により得られた電極膜も電解質膜も水分が乾燥するともろくなり、加熱圧着による固体電解質膜との積層化(三層化)を試みたが、うまく接着せず、三層化構造のアクチュエータを作製することができなかった。そこで、水分散時にイオン液体を共存させて電極膜、電解質膜を作製したところ、適度な柔軟性が付与され、圧着による積層化に成功した。2V程度の電圧を印加したところ、変形応答は遅いもののDNA由来高分子を支持高分子とするアクチュエータの作製に成功した。これまで、ナノカーボン高分子アクチュエータの変形応答の問題点として、長時間電圧通電した際に、変形が戻ってしまうことがあった。この点、今年度、DNA由来高分子を用いて作製したナノカーボン高分子アクチュエータは2時間程度直流電圧を印加しても変位の戻り現象が見られず、安定した変形応答を示すことができた。イオン液体としてイミダゾリウム系のイオン液体を用いた場合、DNA由来高分子からなる電解質膜のインピーダンスを測定した結果、DNA高分子中のイオンの移動度は1mS/cm以下であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度当初に計画していた、DNA由来高分子とイオン液体を混合した電解質膜およびカーボンナノチューブとイオン液体をDNA由来高分子に分散させた電極膜から三層構造のナノカーボン高分子アクチュエータを作製し、2V程度の低電圧で変形させることに成功した。しかし、応答速度が遅く、さらに、イオン液体種や量を最適化してアクチュエータの変形応答の改善を図る必要がある。また、昨年度、疎水化に成功したDNA由来高分子を用いたキャスト法によるアクチュエータの作製には成功していない。これは、合成した疎水化DNA高分子の有機溶媒への溶解性が悪いことが原因である。本問題点は今年度末までに解決することができた。次年度、疎水化したDNA由来高分子を用いたアクチュエータの作製および特性の評価を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度作製に成功したDNA由来高分子とカーボンナノチューブおよびイオン液体からなるナノカーボン高分子アクチュエータの電極膜を用いて、DNAと相互作用(インターカレーション)する有機色素やマグネシウムイオンをはじめとする種々の金属イオンに対するセンシング特性をサイクリックボルタンメトリーにより評価する。また、同時に、DNA由来高分子を利用したナノカーボン高分子アクチュエータの応答速度を改善するために、イミダゾリウム系のイオン液体以外に、アンモニウム系のイオン液体等の複合化についても検討する。また、疎水化したDNA由来高分子を支持高分子とする高分子アクチュエータの作製とアクチュエータ特性の評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた旅費や謝金等の使用がなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の消耗品の購入にあてる。他の使用計画としては、研究成果の発信のため学会参加費等に使用する予定である。また、その他の経費としてはNMR等の分析費に使用する予定である。
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