平成28年度の研究結果から、金属溶湯脱合金化における通電の効果は主に脱合金化反応速度に影響を及ぼすことが分かったが、ポーラス構造自体には大きな影響を及ぼさなかった。この結果を踏まえ、平成29年度では金属溶湯脱合金化におけるポーラス構造の配向性等を制御する手法を確立するために、通電にこだわらず多方面からの実験に取り組んだ。 ポーラス構造の生成の初期段階は固/液界面での反応進行方向に配向した針状のリガメントの生成と、その後のリガメントの表面積を減少させるための形態緩和であることが明らかとなったため、脱合金化温度を低くして形態緩和時間を長くすることで、初期の配向状態が維持できることが分かった。また、脱合金反応界面の移動速度は前駆合金に含まれる犠牲元素が多いほど早くなることが分かり、配向したリガメントの成長に関連していることが分かった。これらの結果をもとに、前駆合金組成および脱合金化温度を最適化し、数十ナノメートルサイズのポアが脱合金反応進行方向に配向したポーラス鉄合金を得ることに成功した。 一方で、ポーラス構造を階層構造に制御する新たな金属溶湯脱合金化技術の開発にも取り組んだ。前駆合金を第一の金属浴に浸漬し粗大なポーラス構造を生成させ、次にこれを第二の金属浴に浸漬することで第一段階で生成したポーラス構造をさらにポーラス化することに成功した。得られたポーラス金属は気孔サイズ分布に二つのピークを持つバイモーダル型ポーラス金属であり、電池電極などの比表面積と物質輸送性の両方が要求される分野に役立つものと考えられる。
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