研究実績の概要 |
400℃でピーク時効後60%または80%冷間圧延を行うという単純な加工熱処理をCu-21Ni-5.5Sn合金 ((21-5.5)R-A)とCu-15Ni-8Sn合金 ((15-8)R-A)の他に,Cu-9Ni-6Sn合金((9-6)R-A)と今回提案したCu-9Ni-9Sn合金((9-9)R-A)に適用し高強度化に成功している.その後適切な焼鈍を行い,これまで以上に強度,導電性,耐応力緩和特性のバランスの優れたCu-Ni-Sn合金の創成を図った.得られた結果は以下のようである. (1) (15-8)R-Aと(21-5.5)R-A合金の400℃焼鈍後の引張強さσu(約1300MPa)は(9-9)R-Aと(9-6)R-A 合金の焼鈍後のσu(約1200MPa)より高い.しかし前者の焼鈍後の導電性E(=9, 6%IACS)は後者のE(=12,11%IACS)より低い.焼鈍後の各合金間の強度の違いは,転位密度,変形双晶境界間隔,析出物間距離の違いから理解することができる. (2) 焼鈍後の上記4種類の合金は良好な耐応力緩和特性を示す.これは焼鈍中圧延によって導入された転位の周辺のSnによるコットレル雰囲気の形成により転位が固着され可動転位密度が減少することに加え,Snと親和力の大きいNiが対となってコットレル雰囲気をつくり転位運動の抵抗となっているためであると解釈される. (3) 焼鈍後の(21-5.5)R-A合金の耐応力緩和特性(応力緩和率R=9%)は焼鈍後の上記4種類の合金の中で最も優れるのに対し,焼鈍後の(15-8)R-A合金のそれは最も劣る(R=19%).焼鈍後の4種類の合金の応力緩和率の違いは,Cu母相中のNiとSnの固溶量の違いに帰することができる. さらに,Cu-9Ni-6Sn合金については曲げ加工性も評価した.
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