研究課題
骨粗鬆症は高齢社会とともに増加してきているが、金属製インプラントを脆弱な骨に固着させるためにはインプラント側のみならず、脆弱な骨を改変する必要がある。そのために骨形成促進作用を有する金属イオンを放出する新規生体活性チタン材料の開発を目指している。我々はチタン金属表面の様々な処理方法を開発してきた。アルカリ加熱処理は水酸化ナトリウムを用いた化学処理および熱処理により純チタンおよびチタン合金に生体活性能(骨伝導能:骨と結合する能力)を付与する技術であり、すでにセメントレス人工股関節として臨床応用され、良好な臨床成績が得られている。また、多孔体チタンへの応用では骨伝導能のみならず骨誘導能(骨を形成する能力)を見出し、その成果を脊椎固定術において臨床応用した。さらに骨伝導能を向上させ、安定した処理層を得るためのカルシウム(Ca)処理を開発し、その安全性と有効性を評価した。ただ、従来の生体活性チタンが有する骨伝導能、骨誘導能は受動的な機能であり、脆弱な骨に対する金属製インプラント手術の成績向上のためにはインプラントに能動的な機能の付与が必要である。近年、マグネシウム(Mg)イオンやストロンチウム(Sr)イオンの骨形成に対する有効性が報告され、注目を集めている。骨形成を促進するMgイオンあるいはSrイオンをチタンインプラント表面の処理層に同時に導入し、これらのイオンを擬似生体環境下で徐放させること、in vitroの研究においてアパタイト形成能があり、金属イオンの至適濃度を明らかにした。本研究ではMgイオンおよびSrイオンを導入したCa処理チタンの生体内での評価を行い、その安全性と有効性を評価し、バイオ機能を有する新規金属製生体活性材料の開発を目指す。
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Acta Biomaterialia
巻: 63 ページ: 383~392
doi: 10.1016/j.actbio.2017.09.019. Epub 2017 Sep 14.