本研究では、マグネシウム合金の分解性に対する集合組織の影響の解明を目指している。昨年度までに純マグネシウムの生体内分解性に対する集合組織の影響を評価を達成したことから、本年度は、生体必須元素を添加したマグネシウム合金の分解性に対する集合組織の影響の解明を、実験と計算の両面からの実施を試みた。 第一原理計算では、昨年度に引き続き、マグネシウム合金の分解性を評価可能なモデルの構築を試みた。合金元素を添加後も、昨年度と同様に仕事関数と結晶面の関係の定量評価が可能であった。また、純マグネシウムの結果と得られた結果を比較することで、生体内分解性に対する添加元素の影響が定量的に評価可能であることが示された。 実験においても、マグネシウム合金の押出材を利用し、異なる集合組織を有する試験片を準備し、その電気化学的特性の評価を行うことで、集合組織による生体内分解性への影響を評価した。この結果として、押出方向と平行な方向および垂直な方向で異なる腐食電位を示したことからマグネシウム合金の生体内分解性の底面配向度への依存性が改めて確認された。また、マグネシウム合金の変形にともない集合組織が変化する場合には、電気化学的特性が変化することが確認できた。 したがって、今後のマグネシウム合金の医療用デバイスの開発においては、デバイス表面の集合組織にともなう、生体内分解速度の部位依存性を考慮することが重要であることが示された。
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