複相鋼の力学特性を支配するメゾスケールな基本因子を明らかにすることを目的に,軟質+硬質オーステナイト複合組織を有するFe-Ni合金を用いて,その0.2%耐力に及ぼす硬質オーステナイト分率の影響を調査した.0.2%耐力は硬質オーステナイト分率の増加に従って連続的に上昇したが,その増加挙動はある分率を境に非線形的なものであった.この非線形的な強度の増加挙動は,硬質オーステナイトのパーコレーション挙動と一致した.これらの結果から,個々の硬質オーステナイト粒がしっかりと連結し,複合組織の母相となることで,塑性ひずみが軟質,硬質オーステナイトともに均一に分散し,顕著な強化をもたらすことが明らかとなった.
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