高効率火力発電用ガスタービンの高温部材に必須な遮熱コーティング(以下TBC)は,基材上にボンドコート(以下BC)として耐酸化金属コーティングを被覆し,さらにトップコート(以下TC)としてセラミックコーティングを被覆した2層から構成され,界面を有する.高温環境でTC/BC界面に発達する熱的成長酸化物(以下TGO)はTCのはく離要因の一つなので,TGOと界面熱抵抗との関係を明らかにすることが重要である.またTCは主に溶射法で成膜され,偏平・堆積した溶射粒子から成るので,組織的異方性を有する.したがって,TBCの遮熱性能は,TCの熱伝導率に加え,TC/BC界面熱抵抗やTCの熱伝導率異方性の検討も必要である. 本研究では,TC/BC界面熱抵抗に及ぼすTGOの影響を検討した.熱処理条件を変化させた大気中熱処理をTBC試験片に施し,TGOと界面熱抵抗との関係を検討した.その結果,溶射したままのTBCでは,TCはアンカー効果によってBCと密着するため,未接着領域が局所的に存在し,界面熱抵抗は高い.一方,熱処理によってTC/BC界面にTGOが薄く発達すると,TC/TGO/BC間で化学的結合が生じ,界面熱抵抗は低下する.ただし,TGOが厚膜化すると界面近傍でき裂が発生するので,TGOの膜厚と関連付けた界面熱抵抗の検討が今後必要である. さらに熱伝導率は,熱拡散率,比熱容量,かさ密度の積から求まるので,TCの熱拡散率の異方性を検討した.組織が異なるTC単層試験片を用い,板厚方向の熱拡散率と,開発した専用ジグを用いて面内熱拡散率もレーザフラッシュ法で室温から900℃まで測定した.その結果,いずれのTCでも板厚方向よりも面内方向の熱拡散率が高く異方性を有すること,さらに異方性の大きさは組織に依存するが,温度に依存しないことが明らかになった.
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