研究実績の概要 |
本研究は、水素社会の実現に不可欠な水素を、加速性分子篩作用により選択的に分離するナノ自己組織化分離チャンネルを有する革新的水素分離チャンネル膜を創製し、その新規分離機構の解明と分離性能の最適化を行うことを目的とする。従来の高分子膜の溶解・拡散機構に基づく膜材料設計とは異なり、高度に分子設計されたポリイミドとメタクリル酸誘導体から成るABA型ブロックコポリマーにナノ自己組織化作用を発現させて水素分離チャンネルを形成させようとする。 本研究は3年計画であり、ポリイミド(B成分)と水酸基含有メタクリル酸誘導体(A成分)から成るABA型ブロックコポリマーによるナノ自己組織化作用の発現による革新的水素分離チャンネル膜の創製とその新規分離機構の解明および分離性能の最適化を目的として研究を進めた。平成27・28年度において、ポリイミドマクロイニチエーターと水酸基含有ポリメタクリル酸セグメントのセグメント鎖長を変えたブロックコポリマーの合成をATRP法で行い、溶剤キャスト法による溶媒の揮発過程でナノ自己組織化を発現させ製膜した。得られた化合物は、1H-NMR, 13C-NMR, FTIRおよびGPC等を用いて化学構造を同定した。そして膜形態をSEMやPOM等の顕微鏡を用いて観察し、DSCやTGAを用いて膜の耐熱性を研究した。 3年目となる平成29年度は、平成27・28年度の研究成果に基づいた実験条件にて作製した膜について、当研究室で試作した測定装置を用いたガス透過実験を水素、酸素、窒素、二酸化炭素、メタン、水蒸気に対して行い、各ガスの透過係数を得た。そして水素とその他のガスとの分離係数を導き出し分離性能を考察し、ABA型ブロックコポリマーの設計にフィードバックした。本年度中に分離性能評価と膜合成のフィードバックを2回繰り返すことができ、分離性能の最適化に近づけることができた。
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