当該研究では、従来有害相とされているLaves相を強化相として有効利用したフェライト系耐熱鋼の創製を目的に、同鋼におけるLaves相の析出制御法の確立を目指し、最近申請者が着目するδ-Fe→γ-Fe+Fe2M(Laves) 型反応経路におけるLaves相の析出過程とクリープ強度に及ぼすLaves相の析出形態の影響を調べる。当該年度では、Fe-Cr-Ta3元系におけるδ→γ+Fe2Mへの分解反応によるLaves相の析出速度および析出形態について検討した。具体的には、共析組成を有するFe-Cr-Ta 3元合金試料を用いて等温時効及び連続冷却実験を実施した。その結果、同合金では層状のLaves相とγ相が先進界面をもって生じるパーライト型の析出反応が生じ、その析出開始線のノーズは1000℃/30 min程度に存在することを明らかにした。この析出反応は、Fe-Cr-Hf3元系で生じる相界面析出反応に比べて3桁以上長時間側で生じ、組織制御し易いを示した。また、連続冷却速度を10 ℃/s~0.02 ℃/sに変えた実験を行い、10 ℃/sではパーライト型反応は生じないが、0.1 ℃/s以下では上記の反応によるLaves相の層間隔は冷却速度の低下に伴い0.5 μm~2 μmの範囲で増加した。また、上記反応によるLaves相は粒界上に優先析出する傾向は無く、高温クリープ特性において重要となる粒界被覆法についても今後検討する必要があることが示唆された。
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