研究課題/領域番号 |
15K06496
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小林 覚 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (60455847)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 組織制御 |
研究実績の概要 |
当該研究では、Laves相を強化相として有効利用したフェライト系耐熱鋼の創製を見据えて、同鋼におけるLaves相の新たな析出強化法の確立を目指し、δ-Fe→γ-Fe+Fe2M(Laves)共析型反応経路におけるLaves相の析出過程とクリープ強度に及ぼすLaves相の析出形態の影響を調べる。 当該年度では、上記の反応経路において生じる相変態過程の理解を目的として、相界面析出が生じるFe-9Cr-0.1Hf 3元合金とパーライト型の析出が生じるFe-9Cr-0.6Ta 3元合金の中間に位置するFe-9Cr-0.05Hf-0.3Ta 4元合金を準備して等温変態挙動を調べ、相界面析出反応のノーズがHf添加3元合金に比べて低温長時間側に移動し、δ相から直接Laves相が析出する反応がより促進されることを明らかにした。この結果より、本反応経路における相変態を支配する因子として、δ→γ変態の駆動力、溶質元素の拡散係数およびLaves相の析出のための過飽和度が示唆された。 クリープに及ぼすLaves相の析出形態の影響に関しては、昨年度得られたクリープ特性に及ぼすLaves相の析出の影響を組織観察により検討した。すなわち、以下の3種類の試料:相界面析出材、焼戻し析出材および無析出材の比較において,焼戻し析出材が最も遷移域のクリープ速度が低く、最少クリープ速度が長時間側に移行して破断寿命が向上した結果は、焼戻し材のクリープ中断材の組織観察により、クリープ変形中に生じた析出物により転位の運動が妨害されることに起因することが示唆された。また、相界面析出材のクリープ速度は未析出材と同程度であるが加速クリープの開始が遅くなり破断寿命が向上する傾向は高温低応力側でより顕著になり、その傾向が相界面析出粒子による変態組織の安定化に起因することが結論づけられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初の研究計画・方法どおりに実験が進み、成果が出ているため。
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今後の研究の推進方策 |
δ-Fe→γ-Fe+Fe2M(Laves) 共析型反応経路におけるLaves相の析出過程の理解を目的として、δ→γ変態の駆動力、溶質元素の拡散係数およびLaves相の析出に対する溶質元素の過飽和度を変化させた基礎実験を実施する.具体的には、Fe-Cr-Hf およびFe-Cr-Ta系においてCr濃度を系統的に変化させて、Laves相の析出に対する溶質元素の過飽和度を一定に保ちつつ、δ→γ変態の駆動力を変化させた際の組織形成を調べる実験を試みる。また、耐熱鋼の強化に必須のMoやWを添加した際においても相界面析出を組織制御に利用可能な合金設計手法の確立を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費及び人件費が当初の予定よりも低く抑えられたため。次年度に繰り越した予算は、主に人件費に使用する予定である。
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