研究課題/領域番号 |
15K06507
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
横山 賢一 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80308262)
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研究分担者 |
酒井 潤一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90329095)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 腐食防食 / 水素脆性 / 老朽化 / 破壊 / 生体材料 |
研究実績の概要 |
本年度は、ステンレス鋼中の水素の存在状態を変化させることを目的とした改良陰極電解水素添加法を用いると、極低温の高速引張試験において早期破断を引き起こし、粒界破面率が顕著に増加することを示した。高速変形下では、水素が転位と相互作用しにくいため、ひずみ誘起されるマルテンサイト変態と相互作用する水素が顕著になることを示唆している。 ニッケルーチタン超弾性合金に、引張応力を負荷し応力誘起マルテンサイト相に水素を添加した後に除荷すると、水素添加量の増加に伴って逆変態が抑制されることを明らかにした。これは、マルテンサイト相に固溶した水素は母相への逆変態を強く抑制すること示し、逆変態と水素との相互作用が脆化に大きく影響する場合があることを示している。また、微量水素添加による本合金の局部腐食抑制は、溶液温度、弾性変形や応力誘起変態などの影響を受けても効果があることを系統的に示した。 純チタンは、顕著な腐食が起こらない水中でさえ、摩耗による酸化皮膜の破壊に関連して脆化するほどの水素を吸収することを見出した。この水素吸収は、生体内における材質劣化の原因の一つと考えられる。水素吸収後の純チタンを大気中で熱処理することで水素化物の析出形態を制御すると、水素化物が転位運動を抑制することで負荷応力下における室温クリープ変形が抑制されることを示した。 水素吸収した純タンタルを大気中で時効すると試料外へ水素放出することなく、脆化が促進されることを見出した。このことは、時効中の水素の拡散による欠陥の形成が脆化に影響を及ぼしていることを示唆している。 以上のように、本年では高耐食性合金の水素吸収が引き起こす特異な脆化及び腐食挙動を数多く見出し、その脆化機構を検討した。これらの知見は、合金の寿命評価及び合金開発の新たな指針となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度で得られた結果の一部は、当初計画した通りに学会などで研究成果として発表している。それに加えて、当初予想したものと異なる高耐食性合金の特異な水素脆性挙動もいくつか見出すことができている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた高耐食性合金の特異な水素脆化及び腐食挙動の現象に関する知見をさらに詳細に調べる予定である。また、その機構についても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で取り扱った高耐食性合金において、予想外の興味深い特異な水素脆化挙動がいくつか見出されたが、おおむね順調に研究が進行し、当初予定していた追加や補足実験等で必要となる消耗品等を購入する費用を軽減することができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究費は当初に計画した通り、実験消耗品(試験用材料、試験加工用関連物品、試薬など)、旅費(研究打合せ旅費、成果発表旅費など)、人件費・謝金(実験補助費、英文校閲費など)、その他(印刷費、論文掲載費など)として使用する予定である。
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