研究実績の概要 |
我々の研究グループでは,粉末冶金の分野で多用されている「カーボニル鉄粉」を炭素粉に混ぜ合わせ,その中にチタンを埋め込み,窒素フロー中で加熱・保持することで,チタン中に炭素や窒素を容易に拡散できることを見出した。このような現象は大気中で加熱した場合にも認められ,さらに酸化物の還元にも利用可能な現象であることがわかってきた。そこで,鉄粉と炭素粉を使った,新しい熱還元・炭窒化プロセスの開発を目指して,研究を開始した。しかしながら,平成27・28年度の研究を通して,ルチル粉末を還元・炭窒化してTi(C, N)粉末を直接作り出すことは難しいとの結論に至った。 そこで,ルチル粉末については,加熱・還元により黒色の低次酸化チタンにすることで黒色顔料として利用することを新たな目標とした。具体的には,鉄・炭素混合粉末にアルミナ粉末を添加し,ルチル粉末の黒色化に及ぼす加熱温度・保持時間・アルミナ添加量の各影響について調査した。 一方,大気中での加熱によって金属チタンに炭素や窒素を拡散させる方法については,そのメカニズムも含めて詳細な調査を行った。アルミナ坩堝の底に純チタン粉末(粒径0.015-0.045 mm)約1 mLを敷き,この上を市販の鉄粉,グラファイト粉,アルミナ粉から成る混合粉末約6 mLで覆い,坩堝に蓋をした。これを電気炉にセットして加熱を開始し,大気中,873-1473 Kの温度域に保持した。グラファイト粉とアルミナ粉を混ぜ合わせただけでは,1273 Kに加熱した後のチタン粉末は酸化され,白色の焼結体となった。しかし,鉄粉を含む混合粉末を使用した場合にはチタンの炭化物(または窒化物)の生成が示唆された。特に1473 K,3.6 ksの熱処理では,酸素・炭素・窒素の拡散によりチタン粉末全体が炭化物(または窒化物)になり,金属チタンの領域は観察されなくなった。
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