研究課題/領域番号 |
15K06514
|
研究機関 | 宇部工業高等専門学校 |
研究代表者 |
茂野 交市 宇部工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (60707131)
|
研究分担者 |
吉田 政司 宇部工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (10370024)
徳永 仁夫 鹿児島工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (70435460)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | アルミナ / 焼結助剤 / 低温焼結化 / 高熱伝導 / LTCC(低温同時焼成セラミックス) |
研究実績の概要 |
Al2O3(アルミナ)は高熱伝導・高強度かつ良好な電気特性を有しており、配線基板やICパッケージ等の電子部品材料として広く使用されている。しかし、アルミナの焼結温度は約1500℃と高いため、導体と同時焼成する際にWやMoなど高融点・高抵抗の金属を使用する必要があった。アルミナをLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics: 低温同時焼成セラミックス)材料として低融点・低抵抗の金属であるAg(融点約960 ℃)やCu(融点約1080 ℃)と同時焼成するためには、多量のガラス(全量の約50%以上)を添加する必要があった。そのためLTCC材料のほとんどは低熱伝導(約2~5 W/mK)・低強度であるという欠点があった。そこで我々は少量の添加でアルミナの低温焼結が可能な焼結助剤の開発を行ってきた。最近、CuO-TiO2-Nb2O5系助剤及びCuO-TiO2-Nb2O5-Ag2O系助剤をわずか5 wt%添加することにより大気雰囲気・焼成温度960 ℃未満で緻密なアルミナが得られることを見出した。 今年度は上記低温焼結アルミナの焼結メカニズムの考察を行った。その結果、助剤やアルミナが液相を生成することなく固相状態でもほぼ緻密な焼結体が得られることがわかった。すなわち、本系ではsolid-state-activated-sintering(固相活性焼結)が起こっていることを明らかにした。さらに、助剤及びアルミナの格子定数測定やTEM-EDSによる粒内の元素分析により、焼結途上における助剤-アルミナ間の固溶度合いの違いを調べた。そして、アルミナの助剤への固溶度合いが助剤のアルミナへの固溶度合いよりも大きいことを示唆するデータが得られた。現在、誘電特性の向上や助剤量の減量化等の課題に取り組んでいる。また、本低温焼結アルミナが無収縮焼成可能か否かも見極めたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、主として3つある。ひとつは、(A)粉体プロセス制御による等方収縮焼成(通常焼成)でのアルミナのさらなる低温焼結化である。(B)そして、上記低温焼結アルミナの焼結メカニズムの解明である。(C)さらに、焼結の起こりにくいとされる無収縮焼成でも緻密なアルミナを開発することである。 (A)に関しては、前年度、焼成雰囲気の制御により誘電特性を損なうことなくさらなる低温焼結化を実現することができた。さらに、誘電特性の向上や助剤量の減量化等の課題にも取り組んでいる。(B)については、今年度、上述のようにsolid-state-activated-sintering(固相活性焼結)が起こっていることを明らかにし、新たな知見が得られた。(C)については2017年度に本格検討に入る。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、主として3つある。ひとつは、他の誘電体材料や他分野のセラミックス材料への応用を視野に入れ、本低温焼結アルミナの焼結メカニズムの解析を行うことである。具体的には少なくとも以下の2つの検討を予定している。 ・高温X線回折による焼成中の焼結助剤の挙動分析 ・アルミナ焼結時の拡散律速種の特定(酸素イオンに着目) もうひとつは、さらなる誘電特性向上や低温焼結化を目指し、焼結助剤の組成や添加方法の影響の明確化を行う。最後は、通常焼成と無収縮焼成との焼結性の相違点を把握し、無収縮焼成実現のために必要な因子を明らかにする取り組みを行うことである。なお、新たな発明があった場合には特許出願を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
さらなる焼結性向上を目的とし、当初計画では原料粉末を合成する装置を購入予定であった。しかしながら、アルミナの焼結メカニズムに関する実験に注力していたため2016年度内の購入を行わなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
当初計画どおり、原料粉末を合成する装置を購入する予定である。また、焼結メカニズムの解明に向けた分析や焼結備品購入、国際会議発表等にも予算を執行する予定である。
|