研究課題/領域番号 |
15K06517
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
木村 正雄 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (00373746)
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研究分担者 |
丹羽 尉博 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 技師 (00743709)
君島 堅一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別技術専門職 (20396534)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 放射光 / その場観察 / X-CT / XAFS / 金属 / ステンレス |
研究実績の概要 |
溶解・析出を伴う金属/水溶液界面反応における「反応トリガー」を可視化することを目的として、A. 金属/水溶液界面の形状を三次元で可視化、B.界面近傍に存在する化学種の分布を二次元で可視化、C.電気化学反応を例題として反応トリガーの可視化、の三点から研究に取り組んでいる。平成28年度は、項目B.について以下の三点を実施した。 B-1. 電気化学的ポテンシャルを印加した状況での化学種の存在状態の観察するシステムの高度化:平成28年度に作製したprototypeの反応セルを、高エネ研の物質構造科学研究所/放射光施設PFのBL-15A1ビームラインと組み合わせることによるシステムの高度化を実施した。その結果を用いて金属/水溶液の界面にX線を透過可能な条件下で、溶液の種類や金属の電気化学ポテンシャルを変えながら化学種の観察をする空間分解能を従来の100μmから20μmへと大幅に高分解能化することに成功した。 B-2. 強制腐食反応による界面形状変化観察:項目B-2で製作した観察システムを用いて、強制腐食反応による界面形状変化を観察に成功した。鉄金属箔を用いて電気化学ポテンシャルを低pHかつ卑な(高い)電位に保つことにより、金属元素の溶解が進行する過程を観察した。電位および水溶液中のハロゲン化物イオン濃度を変化させることによる反応条件の差異の観察を解明した。 B-3. 広く社会で使用され工学的にも非常に重要なステンレス鋼にB-2の技術を適用し、HCl溶液下での溶解現象を観察した。溶解の速度定数を決めると共に、耐食性を決める添加元素であるクロムイオンとハロゲン化物イオンの相互作用について重要な知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画に沿って研究が進捗している。平成27年度はA. 金属/水溶液界面の形状を三次元で可視化、を行い、その基礎技術をベースに平成28年度はB.界面近傍に存在する化学種の分布を二次元で可視化に必要なシステムの開発とステンレスでの基礎的実験を完了した。最終年度である平成29年度は、C.電気化学反応を例題として反応トリガーの可視化から研究に取り組み、本課題の総括をする。
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今後の研究の推進方策 |
C. 強制腐食反応が進行する条件下で、数10μmに集光した放射光マイクロビームを溶液部分に照射し、X線吸収分光(X-ray Absorption Fine Structures)により溶液中の化学種の状態を観察する手法を確立する。具体的には、組成の異なるステンレス鋼を試料とし、ハロゲン化物イオン(Cl-,Br-)を含む低pHの水溶液との界面での反応を観察する。ステンレス鋼中の金属元素(Ni,Cr)やハロゲン化物イオン等の化学種の界面近傍の濃度勾配や配位構造を明らかにする。電気化学反応を例題として反応トリガーの可視化:溶解・析出を伴う金属/水溶液界面反応における「反応トリガー」の反応機構の解明に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
手製の反応セルでの実験を先行して進めることにより、装置導入の詳細仕様を決定した上で電気化学反応セル装置の購入を平成28年度に計画していた。しかし手製の反応セルでの実験により、導入装置に付加すべき新機能(仕様)を新たに着想し、それを含めた装置の導入が本研究の目的遂行上必要であることが判明した。そこでの成果を踏まえた最終的な実験装置の導入を平成29年度としたため予算残が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
化学種の不均一状態をイメージングする装置等の高度化を平成29年度に行い、本課題の最終目標である電気化学反応の反応トリガーの可視化に取り組む。
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