研究実績の概要 |
溶解・析出を伴う金属/水溶液界面反応における「反応トリガー」を可視化することを目的として、A. 金属/水溶液界面の形状を三次元で可視化、B.界面近傍に存在する化学種の分布を二次元で可視化、C.電気化学反応を例題として反応トリガーの可視化、の三点から研究に取り組んでいる。平成29年度は、最終年度として、項目C.について以下の点を実施した。 C-1. 開発した電気化学反応セルを、高エネ研の物質構造科学研究所/放射光施設PFのBL-15A1ビームラインと組み合わせることにより、金属/水溶液の界面にX線を透過可能な条件下で、溶液の種類や金属の電気化学ポテンシャルを変えながら化学種の観察をする空間分解能を従来の100μmから20μmへと大幅に高分解能化して測定する手法の高度化を実施した。特に平成27,28年度の研究成果を元に、設備を導入し、電気化学ポテンシャルの制御や溶液の流通方法について高度化を進めた。 C-2. その結果、広く社会で使用され工学的にも非常に重要なステンレス鋼について反応トリガーの可視化を行った。強制腐食反応による界面形状変化を観察し、電位および水溶液中のハロゲン化物イオン濃度を変化させることによる反応条件の差異の観察を解明した。ステンレス鋼中の金属元素(Ni,Cr)やハロゲン化物イオン等の化学種の界面近傍の濃度勾配や配位構造が明らかになり、電気化学反応のトリガーに関する知見を得られた。成果については、米国電気化学会にて国際会議発表、および学術誌への論文発表を行った。
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