研究課題/領域番号 |
15K06518
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
黄 新ショウ 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 構造材料研究部門, 主任研究員 (80415679)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 難燃性マグネシウム合金 / 圧延 / 集合組織制御 / 成形性 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、前年度に導出した基本合金組成Mg-6Al-1CaとMg-1.5Zn-1Ca(wt%)に対し、微量添加元素が組織、機械的特性、張出し成形性等に及ぼす影響を調査した。Mg-1.5Zn-1Ca合金は特異な集合組織を示すため、この合金への第4元素の添加効果を重点的に調査した。 Mg-1.5Zn-1Caに0.5~3%のAlを添加した結果、圧延材のエッジ割れが顕著に改善された。2.5%以上のAlを添加すると、集合組織はTD-split texture(c軸が板幅方向に約35°傾く集合組織)から通常のRD-split texture(c軸が圧延方向に約15°傾く集合組織)に変化することを確認した。X線回折と組織観察の結果、Alの添加により、Ca系第二相粒子は粗大なMg2Ca粒子から微細なAl2Ca粒子に変化することを明らかにした。上記の集合組織の変化はAl2Ca化合物の形成により、母相へのCa固溶が阻害されたためと考えられる。2%程度までAlを添加した場合、TD-split texture は維持され、破断伸び、均一伸びとn値は増大した。Al添加量が2%付近では、圧延材は最も高い張出し成形性を示し、室温エリクセン値は7.2から8.1まで向上した。主な理由としては、TD-split textureの維持と破壊起点になりうる粗大なMg2Ca粒子が減少したことが挙げられる。2.5%以上のAlを添加すると、TD-split textureは消滅し、底面集合組織の強度は上昇した。その結果、r値が増大し、伸びとn値が低下し、成形性は悪化した。3%のAlを添加すると、エリクセン値は6.9まで低下した。 一方、Mg-6Al-1CaとMg-1.5Zn-1CaにSnまたはZrを0.2%程度添加した場合、集合組織に明瞭な変化が見られず、張出し成形性の向上は確認できなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Caを多く含む難燃性Mg-Zn-Ca合金に適宜にAlを添加し、集合組織制御と第二相粒子の改質により、室温成形性を向上させることに成功した。Al添加量の僅かな違いで集合組織がTD-split textureから通常のRD-split textureに変化することを明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き難燃性Mg合金圧延材の成形性向上に有用な微量添加元素を探索するとともに、EBSD分析を用いてMg-Zn-Ca系合金圧延材の焼鈍処理中の組織変化を調べ、TD-split textureの形成メカニズムを解明する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
作製した合金の化学組成分析の費用を次年度に残したため。
|
次年度使用額の使用計画 |
合金作製原料、研磨用消耗品、電子顕微鏡用消耗品などの購入、化学組成分析などに使用する予定である。
|