微量のCaを添加した合金(Mg-1.5wt%Zn-0.1wt%Ca)に対して450℃で圧延を行い、板材を作製した。圧延直後に圧延材を水冷した。圧延まま材に対して250℃~350℃の温度範囲で焼鈍処理を行った。そこでは、設定された時間毎に試料を炉から取り出し、試料の同一箇所をEBSD分析により測定し、焼鈍処理に伴う組織変化を調べた。 圧延まま材は、圧延中に動的再結晶が起きておらず、通常のRD-split texture(c軸が圧延方向に約15°傾く集合組織)を示した。また、底面配向を示す変形結晶内には二次双晶が多く存在していた。焼鈍とともに、集合組織は通常のRD-split textureから特異なTD-split textureに徐々に変化し、集合組織強度が弱くなる傾向が確認された。静的再結晶は主に二次双晶と変形結晶粒界が交わる地点で起きることがわかった。焼鈍初期段階で生成した静的再結晶粒を抽出して解析した結果、静的再結晶粒は変形結晶と異なるTD-split textureを示すことを明らかにした。TD-split textureの形成は、このような結晶配向を示す静的再結晶粒が生成し、焼鈍とともにTD-split textureの結晶方位を維持しながら粒成長することに起因するものと示唆される。 一方、比較材として同じ圧延条件で作製したCa無添加のMg-1.5wt%Zn合金は、せん断帯領域に動的再結晶が起こりやすく、焼鈍中の静的再結晶の開始も早いことが確認された。Ca無添加の合金は焼鈍後に底面集合組織がさらに強くなることも確認された。これは底面配向結晶が優先的に粒成長したためであると考えられる。Ca添加合金が弱いTD-split textureを維持しながら粒成長することは、Ca固溶原子の粒界偏析によるものと推測される。
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