研究課題/領域番号 |
15K06520
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪市立工業研究所 |
研究代表者 |
谷 淳一 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 電子材料研究部, 研究主任 (20416324)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 熱電材料 / 酸化物還元法 / 複合材料 / 輸送特性 / 第一原理計算 / 環境半導体 |
研究実績の概要 |
マグネシウムスタナイド(Mg2Sn)は、環境半導体として注目されており、原料が安価で高性能な熱電変換素子、太陽電池、赤外線センサー、熱光起電力発電などへの応用が期待されている。しかし、Mg2Snに関する研究報告例は、マグネシウムシリサイド(Mg2Si)と比較すると少なく、Mg2Sn薄膜の作製プロセスと微細組織、電気特性、熱電特性などの相関は十分把握されていない。本年度は、RFマグネトロンスパッタ法を用いてMg-Sn系薄膜を作製し、その作製条件と微細組織、諸特性について検討した。 1.RFマグネトロンスパッタ法を用いて、MgディスクとSnチップから構成される複合ターゲットのSnチップの面積割合を変化させ、膜のMg/Snの組成比を制御することで、Mg2Sn薄膜の作製に成功した。膜組成(Mg/Sn)は、スパッタパワーにも依存し、25Wで成膜した時よりも50Wで成膜した場合の方が、Mg/Sn割合は低くなることが分かった。 2.基板温度RT-573Kで成膜したMg2Sn薄膜はp型半導体であり、パルス通電焼結法により作製した未ドープのn型Mg2Snバルク焼結体と同程度の電気抵抗値を示すことが分かった。Mg2Sn薄膜は、未ドープのMg2Si薄膜(Tani et al., Mater. Res. Soc. Symp. Proc. 1490 (2013) 229)より大幅に低い電気抵抗率を示し、熱電特性に優れていることが明らかとなった。 3.Al、Bi、Cuを添加したMg-Sn薄膜のゼーベック係数は、不純物元素、基板温度の影響を受けた。基板温度RTで成膜した試料は、室温付近においてn型半導体、400-500 K以上の温度域でp型半導体の特性を示した。一方、基板温度473 Kで成膜した試料は、300-700 Kの全温度域でゼーベック係数は正となり、p型半導体の特性を示すことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、3年間で3つのサブテーマを設定し、Mg2Sn系熱電材料の高次微細組織制御を行う計画にしている。本年度は、RFマグネトロンスパッタ法を用いてMg-Sn系薄膜を作製し、その作製条件と微細組織、諸特性について詳細に検討した。MgディスクとSnチップから構成される複合ターゲットを用いることで、Mg2Sn薄膜の作製に成功し、輸送特性や熱電特性とMg/Sn組成比との相関について明らかにした。また、Mg2Sn薄膜の不純物ドーピングについても検討を行い、膜組成、構成相、輸送特性や熱電特性について様々な知見を得ることでき、当初の研究目標を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
Ybファイバーレーザーを用いたMg2Sn系熱電材料の表面改質に着手する。また、新規なマグネシウム系半導体の合成や遊星型ボールミル(平成27年度設置備品)を用いた高次微細組織制御も引き続き行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に設置した遊星型ボールミル(ナガオシステム、Planet M2-3F)に用いるジルコニア容器、蓋などの消耗品を追加で購入する必要が生じた。また、熱電特性装置が老朽化しており、装置性能維持のために消耗品を購入する必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越金は、ジルコニア容器、蓋などの遊星型ボールミルの消耗品や熱電特性装置の消耗品などの購入に充てる予定である。
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