マグネシウム系半導体は、環境半導体として注目されており、原料が安価で高性能な熱電変換素子、太陽電池、赤外線センサー、熱光起電力発電などへの応用が期待されている。Mg2SnやMg3Sb2などの半導体に関する研究報告例は、マグネシウムシリサイド(Mg2Si)と比較すると少ない。本年度は、Mg2Sn薄膜半導体の微細組織と輸送特性の相関、Mg系半導体のレーザ焼結条件について検討を行い、以下の成果が得られた。 (1)RFマグネトロンスパッタ法で作製したp型のMg2Sn半導体薄膜の微細組織と輸送特性に関係について調べた。基板温度(Ts)の上昇に伴い結晶粒径の増大が確認され、Ts = 523 Kの時に1ミクロン以下の三角形および菱形の形状をした結晶が多数観測された。ホール効果測定の結果、Ts=室温の時、キャリア移動度は6.8cm2/Vsであった。一方、Ts = 523 Kの時、キャリア移動度は28cm2/Vsの値を示し、結晶粒径の増加に伴い、移動度は大きく上昇することが明らかとなった。 (2)Mg2Si粉末またはMg2Sn粉末をアルミナ基板上に固定し、Ybファイバーレーザ(波長:1070nm)を用いたレーザ焼結条件と微細組織との関係を比較した。Mg2Si粉末、Mg2Sn粉末ともにレーザパワーの増加に伴い、焼結が進行することが確認できた。Mg2SnはMg2Siよりも融点が低いため、数ワット程度の低いレーザパワーでも緻密な膜を作製することが可能であった。Ar雰囲気下において厚膜の作製が可能であったが、真空中ではMgの揮発が起こり、Mg2Si、Mg2Sn共に原料の一部が分解することが分かった。
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