研究課題/領域番号 |
15K06521
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
山口 勉功 岩手大学, 工学部, 教授 (70220259)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ジルカロイ / 状態図 / 活量 / 塩化揮発 / 酸化除去 |
研究実績の概要 |
ジルコニウム廃棄物の減容化処理として、溶融銅を用いたジルコニウム廃棄物の溶融処理を提案している。提案するプロセスは、まずはじめに溶融銅に放射性物質で汚染されたジルコニウム廃棄物を添加し、溶融Cu-Zr系合金を作製する。次いで溶融Cu-Zrに塩素ガスを接触させ、ジルコニウムを塩化物として優先的に揮発分離する。さらに弱酸化性の雰囲気において、溶融銅中に僅かに残存したジルコニウムを優先的にジルコニア基スラグとして分離、回収。最後に溶融銅中に濃縮された放射性核種の元素を強酸化雰囲気でスラグとして分離、除去するものである。 そこで、プロセス条件の検討に必要なCu-Zr二元系状態図と熱力学諸量の整理とデータベース化のため、Cu-Zr二元系の状態図と熱力学データに関する従来の報告値にRedlich-Kister多項表示式を適用し、熱力学量の整理を試みた行なった。本研究においてジルコニウムの無限希薄溶液における活量係数は0.017と決定された。この活量係数から、提案するCu-Zr合金中のジルコニウムの塩化処理、酸化処理を検討することが可能となる。 次いで、最適化計算により算出されたCu-Zr系状態図と熱力学諸量を用いて、溶融Cu-Zr系合金溶製、ジルコニウムの塩化揮発、放射性核種元素の酸化除去など処理条件の熱力学的な検討を行なった。その結果、溶銅を用いた一連の処理によりジルコニウム廃棄物の溶融減容化の可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
Cu-Zr系状態図ならびに混合熱や生成熱の熱力学諸量に対し、Redlich-Kister多項表示式の適用によりCu-Zr系合金のモデルのパラメータの決定を行なう。得られたパラメータよりCu-Zr系状態図と熱力学諸量を算出し,本実験値,報告値との整合性の検証を行なう。ことなどを今年度の目標とした。これらの目標は全て達成され、さらに平成28年度に予定していた溶融Cu-Zr系合金溶製、ジルコニウムの塩化揮発、放射性核種元素の酸化除去など処理条件の熱力学的な検討を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、Cu-Zr二元系の状態図と熱力学諸量のデータに基づき、溶銅を用いたジルカロイ廃棄物の減容化処理を熱力学的に検討する。検討結果より、溶融銅を用いたジルカロイの溶解、ジルコニウムの塩化揮発分離、放射性核種の酸化除去を、試薬を用いた実験により検証する。 ジルカロイを1200℃で溶銅と共に溶解する。均質な溶融合金が得られるか高温融体を急冷し、光学顕微鏡により確認する。縦型炉ないしは横型炉を用い、1200℃に保持したマグネシアルツボ内の溶融Cu-Zr合金に塩素ガスを吹き込み、溶銅中のジルコニウムを優先的に塩化揮発・分離することが可能か調べる。実験後の溶融合金を化学分析することにより、溶銅からのジルコニアの除去率、銅の揮発損失を明らかにする。ジルコニアを除去した溶銅を酸化し、ジルカロイに含まれる錫、鉄、ニッケル、クロムをスラグに除去することが可能か、1200℃で調べる。実験後の溶銅とスラグを化学分析することで、溶銅からの放射性核種の除去限界を明らかにする。
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