研究課題/領域番号 |
15K06522
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
渡利 久規 東京電機大学, 理工学部, 教授 (90210971)
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研究分担者 |
羽賀 俊雄 大阪工業大学, 工学部, 教授 (00212134)
鈴木 真由美 富山県立大学, 工学部, 准教授 (20292245)
山崎 敬則 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (80342476)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 急冷凝固 / 高濃度アルミニウム含有マグネシウム合金 / 鍛造 / 双ロール法 / 連続鋳造 / 高強度マグネシウム合金 |
研究実績の概要 |
CO2の排出量を加速的に削減する社会の実現のために、自動車や産業機械分野ではさらなる軽量化技術が必要とされている.本研究では,高濃度AL含有マグネシウム合金の溶湯から,急冷凝固法の一つである双ロール法を用いて高強度厚板Mg鍛造用素材を直接的に製造し,これを用いて微細な組織を有する塑性加工用の熱間鍛造マグネシウム部品の成形を実現するための研究を行う. 今年度(平成27年度)は,急冷凝固法によって(1)高強度三層Mgクラッド材の製造装置を用いて厚さ15㎜程度の鍛造用素材を製造し,(2)それら製造された材料の結晶組織の調査および,機械的性質の評価を行うことである.このためMg-Al-Zn系の高濃度AL含有マグネシウム合金幅100mm~150mm,厚さ15mm程度の鍛造用マグネシウム合金素材を製造して得られた材料の性質を評価する実験を行ったところ下記のような結果が得られた. (1)AZ121に対して,ロール周速度3m/min~7.5m/minで厚板製造実験を行った.その結果,最大10.6mmのAZ121材を製造することが可能(凝固長さ120mm,ロール周速3m/min)であることを明らかにした.(2)AZ131に対して,ロール周速度3.0m/min~4.0m/minで厚板製造実験を行った結果,最大14.3mmのAZ131材を製造することが可能(凝固長さ120mm,ロール周速度3m/minの場合)であることを明らかにした. (2)AZ121およびAZ131ともに得られた材料の結晶粒径は20μm~30μmであった.アルミニウム含有量が増加すると結晶粒径も微細になっている傾向が確認できた.(3)得られた急冷凝固材料の引張試験を行って,機械的性質を確認したところ、AZ121の耐力は272MPa, 引張強さ360MPa, AZ131の耐力は365MPa, 引張強さ415MPa,が得られておりこれらの数値は当初の目標を達しており、急冷凝固法によって鍛造用の素材を製造し実用化できる可能性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度(平成27年度)は,急冷凝固法によって(1)高強度三層Mgクラッド材の製造装置を用いて厚さ15㎜程度の鍛造用素材を製造し(2)それら製造された材料の結晶組織の調査および,機械的性質の評価を行うことである.このためMg-Al-Zn系の高濃度AL含有マグネシウム合金幅100mm~150mm,厚さ15mm程度の鍛造用マグネシウム合金素材を製造して得られた材料の性質を評価する実験を計画通りに進められている. (1)AZ121およびAZ131の二種類の材料に対して,厚板製造実験を行うことができている.その結果,最大10.6mmのAZ121材を製造することが可能であり(凝固長さ120mm,ロール周速度3m/min), さらにAZ131に対して,ロール周速度3.0m/min~4.0m/minで厚板製造実験を行い適切な製造条件を得られており最大14.3mmのAZ131材を製造することが可能(凝固長さ120mm,ロール周速度3m/minの場合)であるという結果が得られている. (2)二種類の材料,AZ121とAZ131の結晶粒径は20μm~30μmであり,アルミニウム含有量が増加すると結晶粒径も微細になっている傾向を確認できている. (3)得られた急冷凝固材料の引張試験から,機械的性質を確認したところ、AZ121およびAZ131の耐力と引張強さを明らかにすることができ、鍛造用素材としての機械的性質を有していることが確認できた.残りの分析としては,金属間化合物の分析が必要であるがこれらは平成28年度に行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験によって,高強度マグネシウム合金を得ることを目的として,Al量を9%~13%に調整したAZ91, AZ101, AZ111, AZ121,AZ131マグネシウム合金板材を双ロール法によって製造し,これを鍛造用素材として使用できる可能性を実験データから示してきている.今後は、実際の鍛造実験を行い急冷凝固法で得られた高濃度アルミニウム含有マグネシウム合金の鋳造まま材がそのまま熱間鍛造することが可能であるかどうか,サーボプレスを使用して,熱間鍛造実験を行う予定である. 特に鍛造実験においては,成形中の素材が金型に固着することを防止することが重要であることが,これまでの予備実験結果から明らかになっている.このため適切な潤滑剤の選定とともに,成形中の素材と工具間の摩擦係数の推定法を確立し,適切な潤滑剤の選定をすることが求められる.現在の段階では,黒鉛系の潤滑剤が有力候補ではあるものの,鍛造成形中の素材流れの解析結果と実験結果を比較して,高強度マグネシウム合金に適した潤滑材を選定する必要性がある. また、使用する高アルミニウム含有合金材料も,Mg-Al-Zn系だけでなく,AM100, AM110,AM120, AM130等のMg-Al-Mn系の合金についても急冷凝固実験を行い、鍛造用の厚板の製造実験を行う予定である.今後は鍛造用素材として使用するにはどのような合金系が適しているのかという点と,実際の鍛造成形を支配する成形パラメータ(成形時のプレスのモーション、ダイクッションを使用した際の背圧のかけ方等)は何かという点,の二点を明らかにすることと同時に,強度の高い高アルミニウム含有合金材料の熱間鍛造を実用化するためには何が重要なのかという、鍛造成形の原点に立ち返って研究を続行していく必要性があると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外での成果発表(バンコク、タイ)がテロがあったため,渡航を中止せざるを得なかった.このため,国外出張旅費の翌年度分として請求することとした.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に使用する必要が生じた差額分については,今年度、渡航の安全の問題で発表できなかった海外での成果発表の際の出張旅費として使用する予定である.
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