本研究はイオン液体(IL)に抽出された金属イオンをマイクロ化学チップ等の電解セルを用いて電解還元により形態制御を試みることを目的としている。本年度は、これまでの研究成果を基にILとして[Cnmim][PF6](n=4,6,8)を選定し、(1)[Cnmim][PF6]に抽出されたPd(II)の電解析出挙動に温度、粘性、電極等が及ぼす影響の調査及び(2)[Cnmim][PF6]に抽出された抽出されたPd(II)の有隔膜電解セル、くし型電極を用いた微小流路電解セル等による電析物の形態制御試験を実施した。(1)では無隔膜の電解セルを用いてPd(II)を抽出した[Cnmim][PF6]の電解析出挙動の温度の影響について調査した。その結果、[Cnmim][PF6]の側鎖長さによってもPdの電析物の形態は大きく変化し、さらに温度によっても電析物の形態が変化することが明らかとなった。このことから、電析物の形態はILの粘性に大きく影響することが明らかとなった。また、SEM-EDS分析より電析物はPdが主でありILの構成元素は殆ど混入していないことが明らかとなった。(2)では電解セルを変化させPd(II)を抽出した[Cnmim][PF6]の電析試験を実施した。本試験の結果より、有隔膜電解セルを用いた場合、Pdの電析物は球状を呈しており、隔膜の有無で電析物の形状が変化することが明らかとなった。さらに、くし型電極を用いた微小流路電解セルを用いた電析試験を実施した。その結果、通電と共にIL中でPdの電析反応が進行しIL相に拡散することが観察され、微小流路では形態制御が困難であった。本研究の結果からILに抽出されたPd(II)の電析反応はIL相内で進行するため、IL相を固定化し温度、粘性等を変化させることで様々な形態に制御できることが示唆された。
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